音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
ゴールデンボンバー「ローラの傷だらけ」

「音楽だけで売りたい」からジャケットは真っ白

伊藤 今回、取り上げるのはゴールデンボンバーの「ローラの傷だらけ」です。このバンドは言わずと知れた「女々しくて」で大ブレイクしたビジュアル系エアーバンドですけど、僕は彼らの事務所社長とは一緒にバンドプロデュースをしていたりしたので、彼らの存在もブレイク前から知っていました。当時のライブ映像を観ながら「彼らいいでしょ?」って社長が言っていたのを思い出します。

山口 今は会長になられたユークリッドエージェンシーの木村敏彦さんですよね? インディペンデントな音楽事務所がのし上がっていくのが、音楽業界の歴史ですけれど、近年で「サクセス」した感がある会社ですね。他人事ながら爽快感があって、嬉しかったです。

伊藤 最近は木村さんと会っていなかったんですけど、ゴールデンボンバーのブレイクする瞬間を近くで見てみたかったなぁ。さぞかし爽快だったと思います。

山口 時代の風を手繰りよせながら、アーティストや作品のパワーで勝つのは、この仕事の一番の醍醐味ですね。

伊藤 ましてや彼らは未だにインディーズですからね。これからのバンドやアーティスト、多くのミュージックマンに夢を持たせてくれました。また、一方で彼らがエアーバンドということで、批判的な声も沢山ありました。前回のコラム「“ゲスの極み乙女。”というバンド名に込められた意図を探る」の時も話しましたが、エアーバンドで大ブレイクを成し遂げた彼らも、音楽新世代による音楽のゲーム化現象の1つであると思えます。そして、そんな彼らだからこその葛藤が垣間見えるのが今回のシングル。エアーバンドが今度は「音楽だけで売りたい」ということで、使用は通常版のみ1パターンで特典は一切なし、ジャケットは真っ白です。

山口 ネットニュースなどで話題になっていましたね。

伊藤 前作は初動で15万枚だったのが、今回は初動3万というのが販促チームの予想だそうです。

山口 そんな裏情報を書いちゃっていいの? ちなみに、よくこのコラムで引用させてもらっている人気曲ランキングRUSHの発売前チャートでは、8月1日付の発売前ランキングで8位。同週の発売作品では、EXILE TRIBEに次いで2位だから、話題性という意味では十分期待できると思いますよ。

2014.08.12(火)
文=山口哲一、伊藤涼