音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、2014年7月にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【次に流行る曲】
乃木坂46「夏のFree&Easy」
AKB48の「公式ライバル」として誕生
伊藤 今回は乃木坂46「夏のFree&Easy」を選んでみました。本コラムでアイドルを採り上げるのは初めてですが、たまには良いでしょ?
山口 良いも何も、アイドルはあなたの専門分野じゃないですか? ジャニーズ・エンタテイメントでアイドルの楽曲を作り続けていたでしょ?
伊藤 まぁ、そうなんですけどね。そっちの畑で8年間働いていただけに、あんまりアイドルに傾倒しすぎる発言すると、“専門”っていう見え方しすぎるんで控えてるんですよ(笑)。
山口 乃木坂46にも楽曲提供していましたよね?「走れ!Bicycle」でしたっけ?
伊藤 ですね。あれは乃木坂の3rdシングルでした。その前に、仲間とコライト(共作)した曲がAKB48 に採用されていて、それがきっかけでAKBのライブに招待してもらったんです。はじめてのAKBライブだったし、ジャニーズのライブとは違う空気感に衝撃を受けたんです。そして、良い意味で未完熟なフレッシュさにプロデューサー魂がくすぐられたというか、ライブ帰りに一緒に行ったメンバーとそのままコライトした曲なんですよ。
山口 なるほど。AKB48のライブ帰りにつくった曲が乃木坂46のシングル曲になったんですね。伊藤さんにとっての乃木坂46はどういう存在ですか?
伊藤 彼女たちはAKB48グループの公式ライバルとしてスタートしたんだけど、AKB48グループと同様に秋元康プロデュースでしょ。とんだ茶番っていえばそれまで。だけど、こういう茶番をやってのけるところが凄いところ。
山口 楽屋裏まで見せてしまって、「茶番」にユーザーを巻き込むのが、今らしいやりかたですよね。インターネットで情報が瞬時に伝わるし、隠蔽したり、操作しようとするよりは、「わかってるよね?」って透かしてみせて、巻き込む方が上手くいく場合が多いですね。
伊藤 それを実践して、本当の意味で結果を出したのがAKBです。
山口 僕はアイドル界隈は、それほど明るくないのですが、乃木坂46は、AKB48グループとは、微妙に一線を画しているのは感じます。
伊藤 乃木坂は、CDの売上こそデビューから10万枚あったけど、AKB48グループと比べるパッとしないイメージ。「AKBより可愛いんだけど、なんかすぐに消えそうだねぇ」って声を良くききましたね。それが、いまやシングル出せば50万枚売り上げるモンスター・グループになってますからね。
2014.06.30(月)
文=山口哲一、伊藤涼