【次に流行るもう一曲】
Perfume「Cling Cling」

Perfumeは風格があるのにフレッシュさを失わない

伊藤 次の週にPerfumeの「Cling Cling」のリリースがあります。なんとなく彼女たちもアーティストとしてセカンドフェーズに入った感じですよね。世界からみたJポップをどんな風に引っ張っていってくれるか楽しみです。

山口 5月28日・29日の2日間に、国立競技場の改装を記念した、「SAYONARA 国立競技場 FINAL WEEK JAPAN NIGHT」で、久しぶりにPerfumeを観ましたが、堂々としたステージでした。風格があるのに、フレッシュさが失われないところが、彼女たちの良さなのでしょうね。

伊藤 行きたかったなぁ、SAYONARA国立。

山口 あのイベントの意義は大きいんですよ。日本という国を代表する国立競技場にとって、サッカーやラグビーと同程度にコンサートも大切ですという意味になりますからね。改装後の国立競技場は収容人数も増えて、アスリートにとってだけでなく、音楽家にとっても目指すべき聖地になりました。

伊藤 武道館はともかく、アクセスの良さと収容人数だけで東京ドームが音楽の聖地みたいに語られるのはちょっとまずいですからね。新国立競技場が本当の意味での音楽家が目指す聖地になり、海外アーティストを安心して呼べる・観られる・聴ける場所になってほしいです。

山口 あれだけのイベントを行うのは、様々なレイヤーで調整が大変だったのだと思うのですが、これから日本の音楽を海外に売り出していく意味でも、「音楽日本代表」が組めた意味は大きいです、音楽人の端くれとして、関係各位のご努力に心から感謝します。今回は私は観客の立場でしたが、東京五輪の時には多少でも貢献できるように頑張ります。

椎名林檎のW杯テーマソング騒動について考える

伊藤 日本代表といえば、このコラムを書いている最中、日本中がサッカーで盛り上がっているんですけど、テレビをつけるたびに耳にする椎名林檎の「NIPPON」が気になっています。

山口 W杯ブラジル大会のNHKのテーマソングですね。もうリリース済みなので、本コラムの対象ではないですけれど。

伊藤 この曲の中に「ハレとケ」って言葉がでてくるんだけど、こういう仕掛けが椎名林檎らしくて「ハッ!」とさせられる。これって非日常(ハレ)と日常(ケ)ってことだけど、詞中ではサッカーにかけて“公式試合”と“練習”みたいなことを表現している。ただ、僕が感じたのは、この歌は、表向きはサッカーのことを歌っているようで、実は戦争を歌っているように聴こえるんです。そう考えると「ハレとケ」と言う言葉は“公”と“民”のようにも取れて、それはそれで趣のある世界がありました。

山口 伊藤さんみたいに感じたファンはいたみたいで、右翼的だということで賛否両論になっていましたね。

伊藤 やっぱそうですよねぇ。でもまぁ、騒ぐひとは騒ぐし、勝手にやればいい。音楽ってそういうもんですから。

山口 僕は、椎名林檎らしい様式美のある曲だと思いました。おそらくプロデューサーチームは「炎上PR」的な展開は意図してなかったと思いますが、無視されるより、批判される方がずっと良いというソーシャル時代ならではの出来事ですね。

伊藤 そういう意味では、最近は音楽を作る側が“はみ出す”ことをビビり過ぎな感がありますからね。批判なんて怖がらずにもっとケンカを売って行こうぜ!って強気に攻めるきっかけになってほしいですね。

Perfume「Cling Cling」
ユニバーサル ミュージック 2014年7月16日発売
完全生産限定盤(CD+DVD)2,250円、初回盤(CD+DVD)1,806円
■メジャーデビューから通算20枚目となるシングル。表題曲は、エーザイ「チョコラBBシリーズ」CMソング。特典DVDには、14年春の対バンツアーにおける東京スカパラダイスオーケストラ、RHYMESTERらとの共演ダイジェスト映像などを収録。
■「Cling Cling」作詞・作曲・編曲/中田ヤスタカ
■オフィシャルサイトURL http://www.perfume-web.jp/

【動画サイト】
「Cling Cling」

URL https://www.youtube.com/watch?v=ESDV041WJGg&list=PL3A0A7DCC7F8022B7

山口哲一 (やまぐち のりかず)
音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。(株)バグ・コーポレーション代表取締役、「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。プロデュースのテーマに、ソーシャルメディア活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションを掲げて、音楽とITに関する実践的な研究を行っている。著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)がある。最新刊は『世界を変える80年代生まれの起業家 ~起業という選択~』(スペースシャワーネットワーク)。詳細プロフィールはこちら
Twitter@yamabug https://twitter.com/yamabug
ブログ「いまだタイトル決めれず」 http://yamabug.blogspot.jp/
作曲家育成セミナー「山口ゼミ」 http://www.tcpl.jp/openschool/yamaguchi.html
WEDGE Infinity連載「ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門」 http://wedge.ismedia.jp/category/entertainment

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。ジャニーズ・エンタテイメントで『青春アミーゴ』などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46『走れ!Bicycle』、AKB48『ここにいたこと』などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
http://www.mago-dai.com/?m=201406

Column

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音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2014.06.30(月)
文=山口哲一、伊藤涼