音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、2014年6月前半にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
小泉今日子&中井貴一「T字路」

ヒット予測は「楽しくてためになる」がモットー

山口 今月から月2回になりました。タイトルは変えずに「来月、流行るJポップ」でいきます。読者のみなさんに楽しんでいただけるように頑張りましょう。

伊藤 はい。

山口 近未来のヒット曲を予測することも、その理由や背景を探ることも、骨の折れる作業だけれど、「楽しくてためになる」をモットーにやりたいです。

伊藤  「楽しくてためになる」ですか。

山口 はい、今はNODA MAPの野田秀樹さんが東大生時代からやっていた劇団「夢の遊眠社」のポスターのキャッチコピーにあった気がします。1980年代のことなので記憶が定かでないですが。

伊藤 そうですか……知らないですが。

山口 あと、僕らは現役の音楽プロデューサー、つまり同業者なので、基本的にネガティブなことは言いたくないよね? 自分が制作している途中で、半端な口出しする人に「文句言うなら、自分でつくってみろ!」って思ったこと何十回もあるし。

伊藤 それ言われちゃうとねぇー。でもプロデュースのほうも自信あるんで、依頼されればヒット作りますよ。なんていうとまた同業者から嫌われそうですが(笑)。

山口 良いところをきちんとピックアップして、そのアーティストのファンやマニアな人だけでなくて、ライトな音楽ファンにも届けて、今のJポップシーンに興味を持ってもらえるようにしたいですね。

伊藤 ですね。

山口 僕の「座右の銘」の一つが、「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」なんです。

伊藤 おっ、初めて聞く。

山口 劇作家で小説家の故井上ひさしさんの言葉です。エンタメのプロデューサーとして、いつも心がけたいと思っています。ホリプロの受付に行くと、何故か直筆の額縁が飾られているんです。拝見するたびに背筋が伸びます。

伊藤 ……。

山口 オヤジくさい導入になったのは、今回、あなたが選んだ曲の影響ですよ。

伊藤 (笑)。

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2014.05.30(金)
文=山口哲一、伊藤涼