――ご自身では、どこが評価されたと思われますか?
古村 今回の再放送をきっかけに脚本家の金子成人先生と当時のチーフ演出の清水満さんにお会いしたんですけど、そのときお二方ともに「歌が面白かった」「オーディション会場にすごくニコニコして入ってきた」とおっしゃっていました。私自身はどんな顔していたか記憶にないんですけどね。「笑顔と、北海道出身というのが印象に残った」とも言っていただいたので、黒柳朝さんと同じ「北海道出身」というのが大きかったのかもしれません。

――38年ぶりの『チョッちゃん』はどうご覧になっていますか?
古村 すごく丁寧に作られているし、「こんなに面白かったんだ」と驚いてます。当時の私はまだ新人でいっぱいいっぱいだったんですが、共演者の方々が心からお芝居を楽しまれているなと改めて感じます。皆さんそれぞれいいキャラ出してますよね。
――佐藤慶さん、由紀さおりさん、役所広司さんなど、共演者たちの名人芸もみどころです。
古村 撮影前は「ちゃんとやらなきゃ」「うまくやらなきゃ」と変に力が入っていたんですが、共演者の皆さんと会ったとたん「そんなことできるわけないな」と(笑)。うまくやろうなんて、おこがましいと気づきました。最初に川谷拓三さんが「好きにやっていいからね」と言ってくださって、周りの皆さんが作ってくれた場のなかで、私は自由にやらせていただきました。
けっこう台詞量が多いんですが、ちょっと台詞につまずいてもカメラを止めなかったりして。
「あれ実は、当時の私の癖なんです。無意識にやっていたんですが…」
――金子成人さんの脚本も素晴らしいですね。
古村 やっぱり台詞が見事ですよね。金子先生は台本の読み合わせにいつもいらして、役者の癖を掴むんですよ。蝶子がよく手を横に振りながら「なんもなんも」と言いますが、あれ実は、当時の私の癖なんです。私自身は無意識にやっていたんですが、それを金子先生が拾ってキャラクターに肉付けをしてくださった。
役所広司さんが普段から頭をポリポリしていたのも、いつの間にか役の仕草として取り入れられていました。そういう細かいことも、この作品のいいスパイスになっているなと感じます。

――現在の朝ドラは撮影期間だけでも1年近く取ると聞きますが、当時は制作期間も短いなかでぎっちり撮影されていたんですよね。
古村 オーディションに受かった後に数カ月お稽古があって、クランクインが1月、クランクアップが8月末だったので、撮影期間は8カ月でした。しかも当時は1週間に月曜日から土曜日までの6話ありましたから、本当に「エンドレスで撮影してる」という感覚でした。
「役を演じる」というよりも、素のままに近いところも多かったりして。蝶子の台詞を言いながら、本当に自分が感じたことを口に出しているような感覚にもなりました。大変でしたけれど、8カ月の撮影期間は本当に楽しくて、毎日撮影をしながら現場で元気をもらっていた気がします。
2025.08.12(火)
文=佐野華英