暮らしの中に美しい布を
うちにはたくさんの布があります。学生時代にテキスタイルを学んでいたこともあり、昔から旅に出るとその土地の織物を買い求めたり、古道具屋や雑貨店に雑多に積まれた布の中から私好みの布を掘り出したりしてきました。それも国内だけでなく、パリや南仏、北欧と、海外でも蚤の市や生地屋さんで見つけて連れ帰ってきたものもあります。家で使う分はもう足りててもつい手が出て……。お店で使えるので救われていますが、美しい布に弱いのです。
気に入った布に巡り会ったとき、ガンガン洗濯できるかな、って一度冷静に見極めます。洗濯できないなーって思ったら、ほぼ却下。特別なコレクションでなく、生活に根ざした日用品として、私は美しい布とつきあいたいのです。
買う寸法は「2メートル60センチ」と決めています。使う目的が明白にあるときはまた別ですが、だいたいの場合は「何かに使えそう」と思って買うことが多いから。「2メートル60センチ」の寸法があれば大きめのテーブルのクロスにも間に合うし、余りが出たらコースターにして。はぎれも捨てません。
Column
石村由起子の暮らしの“ツカミドコロ”
石村由起子さんといえば、人気のクラフト作家や料理家、エッセイストなど生活美学のある人たちが一目おく、暮らし上手です。
祖母から受け継いだ知恵と礼節、愛するモノを捨てずに活かすワザ、「これだけは」と手をかけてきた習慣など、多忙な日々のなかでも心豊かに暮らすために石村さんが「大切にしてきた」視点とアイディアを、CREA WEB読者に指南。年齢をこえて共感できるチャーミングな暮らし術を、プライベートフォトを添えて綴ります。
2014.05.26(月)
文・構成=おおいしれいこ
撮影=石村由起子