暮らしの中に美しい布を

既製品のベッドカバーの布は私には重たいものが多く、軽さも布選びのポイント。これはミナ・ペルホネンのデザインのもので、軽いけれど織りがしっかりしている布だから布団からずり落ちない。

 うちにはたくさんの布があります。学生時代にテキスタイルを学んでいたこともあり、昔から旅に出るとその土地の織物を買い求めたり、古道具屋や雑貨店に雑多に積まれた布の中から私好みの布を掘り出したりしてきました。それも国内だけでなく、パリや南仏、北欧と、海外でも蚤の市や生地屋さんで見つけて連れ帰ってきたものもあります。家で使う分はもう足りててもつい手が出て……。お店で使えるので救われていますが、美しい布に弱いのです。

 気に入った布に巡り会ったとき、ガンガン洗濯できるかな、って一度冷静に見極めます。洗濯できないなーって思ったら、ほぼ却下。特別なコレクションでなく、生活に根ざした日用品として、私は美しい布とつきあいたいのです。

 買う寸法は「2メートル60センチ」と決めています。使う目的が明白にあるときはまた別ですが、だいたいの場合は「何かに使えそう」と思って買うことが多いから。「2メートル60センチ」の寸法があれば大きめのテーブルのクロスにも間に合うし、余りが出たらコースターにして。はぎれも捨てません。

石村由起子 (いしむら ゆきこ)
奈良在住。全国からファンが訪れるカフェギャラリー『くるみの木』と、ミシュラン一つ星のホテルレストラン『秋篠の森 「なず菜」』のオーナー。
暮らしを楽しむ祖母の知恵にくるまれて育ち、学生時代には染織を学び、民藝を入口に手仕事に精通。自らのショップで展開する、暮らしの道具のセレクト眼にもファンが多い。さらに近年は、生活プロデュースの視点での商品開発、街おこしプロジェクトなど幅広い分野からオファーが引きもきらない。著書に『私は夢中で夢をみた』(文藝春秋)、『奈良・秋篠の森「なず菜」のおいしい暮らしとレシピ』(集英社)など多数。HP 「くるみの木」 http://www.kuruminoki.co.jp

 

Column

石村由起子の暮らしの“ツカミドコロ”

石村由起子さんといえば、人気のクラフト作家や料理家、エッセイストなど生活美学のある人たちが一目おく、暮らし上手です。
祖母から受け継いだ知恵と礼節、愛するモノを捨てずに活かすワザ、「これだけは」と手をかけてきた習慣など、多忙な日々のなかでも心豊かに暮らすために石村さんが「大切にしてきた」視点とアイディアを、CREA WEB読者に指南。年齢をこえて共感できるチャーミングな暮らし術を、プライベートフォトを添えて綴ります。

2014.05.26(月)
文・構成=おおいしれいこ
撮影=石村由起子