「どうすればいいんだろう?」という不安で現場に向かった最新作
――8月には『赤羽骨子のボディガード』が公開。敵か味方か分からない、これまたミステリアスな3年4組の司令塔・染島役を演じました。
ここまでエンタメに振り切った映画はやったことがなかったので、「自分が出たら、どうなるんだろう?」っていう気持ちでしたし、言い方が悪いかもしれませんが、「やったれ!」な気分だったのは事実で、新しい自分探しと同時にエンタメ寄りのお芝居をする勉強になりました。
集団でお芝居するというのは「最高の教師」と同じだったんですけれど、司令塔という役柄上、みんなの前でお芝居をするというか、みんなが見ている中でお芝居することが初めてで、めちゃくちゃ緊張しました(笑)。
それにお客さん含め、みんなに対して説得力を持たせなきゃいけない役柄なので、エンタメ寄りのお芝居だけじゃなく、物語の主軸に沿ったシーンでのお芝居の使い分けは、とても勉強になりました。
――そして、最新出演作『Cloud クラウド』では、菅田将暉さん演じる転売屋の主人公・吉井の助手となる佐野を演じています。初めての黒沢清監督作はいかがでしたか?
最初、脚本を読んだとき、アクションなどは現場でやってみないと分からないところもありつつ、正直なところ「佐野というキャラはどういう人間なんだろう?」「この人とこの人は、どんな関係性なんだろう?」と思うところはありました。
それで、衣装合わせのときに黒沢監督にお話しする機会があったので、正直に聞いてみたところ「そこはあんまり気にしなくていいよ」と言われたんです。なので、表面上の役作りはしたのですが、中身というか心情に関しては、作り込まずに現場に行きました。
――そこから佐野の不気味さみたいなものは、どのように出したのでしょうか?
クランクインのときは、「本当にどうすればいいんだろう?」という気持ちだったのですが、監督にお聞きしながら、彼のさりげない立ち姿や目線、あと自信を持って言葉を発することで、「そういうキャラに見せるんだな」と、だんだん気づいていきました。吉井さんに対する態度に関しては、じつは前半と後半ではあんまり変えていませんね。
2024.09.27(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖