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 黒沢清監督による最新作『Cloud クラウド』で、菅田将暉演じる転売屋の主人公に雇われる青年・佐野を演じる奥平大兼。デビューから4年、若手演技派俳優へと成長し、8月に公開されたばかりの『赤羽骨子のボディガード』では司令塔役を演じるなど、さまざまな役柄に挑戦している彼のキャリアを振り返る【後篇】。


ヒロインに寄り添う役を演じるときの考え方

――ドラマ「最高の教師」で同級生役だった當真あみさんとは、24年放送のドラマ「ケの日のケケケ」でも琥太郎役で共演しています。

 2人の関係性がそもそも恋愛じゃないし、當真さんが演じたあまねを、ちゃんと人としてリスペクトしている役だったと思うんです。だから、『君は放課後インソムニア』のときに感じた「役としてではなく、自分だったら、相手にどう接して、どういう気持ちになるか?」という感覚で、當真さんを見ながら「こういうところ、頑張っているんだな」「こういうこと、思っているんだろうな」と思いつつ、お芝居していました。もしかしたら、ヒロインに寄り添う役を演じるときの根本的な考え方は、あまり変わってないかもしれないですね。

――23年の年末にはドラマ「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島」が配信。壮大なファンタジーにおいて、ドラゴンを操る少年・タイムを演じました。

 この話をいただいたときに、漠然と明るい性格の役とか、ぜんぜん違う世界観の話とか面白そうと思っていたんです。ここまでファンタジーなオリジナル作品は、あまりないと思いましたし、萩原健太郎監督とプロデューサーさんの「これを映像化したいと思っている」という話にめちゃくちゃ熱量を感じましたし、カッコいいなとも思いました。とにかく、やったことがない役だったので、「もしかしたら、自分の中で新しい発見があるのかもしれない」と思いながら、お芝居させてもらいました。

――24年に入り、3月に鈴鹿央士さんとW主演を務めた『PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』が公開。3歳年上の鈴鹿さんとの共演はいかがでしたか?

 お芝居のタイプでいうと、央士くんと僕はぜんぜん違うと思うんです。央士くんは自分が考えていることを、僕や監督にちゃんと言葉で伝えてくれながらお芝居するので、とても論理的というか分かりやすい。僕はあまり言葉に出して言わないし、たまに思いつきでやってしまうというか、感覚的だったりするので、とてもうらやましいし、央士くんのようになりたいと思いました。

2024.09.27(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖