美しき金目鯛は湯上がり美人!

野菜をたくさん食べられるのもうれしい。結構脂が多いですからね。

 さて、鍋の仕度をしてもらい、いよいよ金目鯛の入場だ。いやはや、金目鯛ってこんなにも美しいものかと溜息が。皮目だけでなく身も濃厚なピンク色。そのまま食べたくなるけど、しゃぶしゃぶしたらいよいよ美しかろうと思わせる。

 しゃぶしゃぶといえども野菜もたっぷり。しいたけやねぎ、ごぼうなどをどっさり入れ、金目鯛と一緒にいただく。すべて、しんなりするものなので、魚の食感を邪魔しないのがポイントかも。特にレタスはすぐ煮えて、優しいシャキシャキ感がしゃぶしゃぶ向きなのは周知の通り。

 早速、ピンクがきれいな金目鯛を野菜の煮えたおだしへ。つけだれは、ポン酢もあるがごま油塩がいい(レバ刺しのあれ)。すだちをちょっと絞って金目鯛を少しさっぱりさせる。野菜と一緒でも、金目鯛だけでも、ああ、美味しい! 当然のごとく刺身状態でもごま油塩でいただいてみたが、しゃぶしゃぶするとより旨みが引っぱり出されるようで、金目鯛恐るべしである。

1人前の雑炊。卵扱いがお見事なのです。

 切り身がなくなりかけた頃合いに、仲居さん(仮)が雑炊の準備をしてくれる。「おだしが美味しくなっていますよ」と飲んでみたら、金目鯛はこちらにも大量の旨みを残していた。濃い、だしが濃いよ! 米好きの私ですから、鍋の締めの雑炊にもあれこれ口を挟みたがるが、卵を混ぜすぎず、細くふわふわに仕上げた卵雑炊は完璧な仕事であった。

 デザートにはなんでかわからないがやけに美味しい杏仁豆腐。金目鯛の脂をたっぷり食べたので、すっきりした杏仁豆腐で締めるのが心地よく、とても充実した時間を過ごすことができた。旅気分から一歩外に出ると現実、というパターンもあるが、蛇崩の街はやけに暗く、じんわり余韻に浸りながら東急バスを待てるのもいい。海辺の街に魚を食べに出かけたくなったとき、東急バスで行ける船宿である。

船宿割烹 汐風 上目黒店
所在地 東京都目黒区上目黒4-36-22
電話番号 03-3712-4935
URL http://shiokaze.co.jp/

北條芽以(ほうじょう めい)
神奈川県鎌倉市生まれ。情報誌編集者を経てフリーライター、料理本の編纂を行う。好きなのは炭水化物(特にごはん)とお肉の組み合わせ。お酒はあまり飲めない。「左手にごはん茶碗を!」

Column

北條芽以のLOVEレストラン

美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!

2014.03.12(水)
文・撮影=北條芽以