LOVE:金目鯛のしゃぶしゃぶ
おだしにくぐらせた金目鯛の旨さといったら……

祐天寺|船宿割烹 汐風 上目黒店

さつま揚げは、揚げた部分にたれがしみているのが幸せ。

 最近、魚が恋しい。しかもお刺身が無性に食べたくて困る。近所に仲を深めた鮮魚店はないし、スーパーの切り身ではなんだか味気ない。しかも、「刺身が食べたいのか、刺身の角が食べたいのか」というくらい、「刺身の角」が好きで、そんなの私の腕と包丁ではなかなか実現せず、かといって高級割烹にふらりと行ける器ではない。

 いろいろと調べて辿り着いたのが、「蛇崩(じゃくずれ)」という、目黒区でも徒歩で活動する人間はあまり立ち入らないエリアの「船宿割烹 汐風」というお店だった。東急バスに乗り、暗い夜道をしばし歩くと、なんということでしょう、そこにはまさに汐風が吹いていた!

 風情のある一軒家なのだが、たたずまいが完全に旅館! しかも、海辺の街で「漁師もしくは網元のオーナーが朝獲れたばかりの魚を出しまくりますよ」的なオーラに満ちた……それが店名の冠にある「船宿」なのですね。看板に偽りのない船宿感だ。お店に入ると、魚拓やら、漁に使う道具やら、水槽やらがたくさん置かれていて、気分は高まるばかり。

 寸前に予約の電話を入れていたので名乗ると、2階に通される。ギシギシと廊下を踏みしめてふすまをがらり。すると和室にテーブル、そして床の間には魚の掛け軸や鯛の置物。なんという船宿! 「おビールでよろしいですか」なんてふすまごしに言われたら、「仲居さん、お世話になります」とポチ袋を渡してしまいそうだ。浴衣に着替えた~い。

こちらで3人分なので結構たっぷり。刺身×ごま油塩で食べるのもお忘れなく。

 というわけで、海辺の旅館にインした(気分の)我々一行。お刺身目当てに来たのだけれど、「初めてならキンメのしゃぶしゃぶがコースになっているのでおすすめですよ」と仲居さん(仮)に言われたとおり、素直にそちらを。金目鯛はこってりしていて魚のなかでも大好物である。

 コースとはいえ、お刺身たっぷり。まんまと写真を撮り忘れたが、思い描いていた通りのキトキトした美しく、ちょっと厚みのある、素敵なお刺身でした。さらに美味しかったのが、さつま揚げ。すり身を丸く揚げたものでトップにはしょうが。甘辛い味を絡ませていて、ブリン! と弾力あり。お弁当に入れたくなるような、ごはんに合いそうな味だ。ブリン! といえばもずくで、とっても太く、味わいのあるもずく。小鉢のすみずみにまで船宿ならではの味があり、旅気分が盛り上がる。

<次のページ> 美しき金目鯛は湯上がり美人!

2014.03.12(水)
文・撮影=北條芽以