●トーク力やリアクションを学んだ津田寛治さんとの現場

――その後、さまざまな作品に出演されるなか、ご自身にとって転機となった作品や思い出深い作品を教えてください。

 「仮面ライダーW」に関しては、昨日まで得体の知れない木ノ本嶺浩だったのが、俳優・木ノ本嶺浩として認知された作品だったといえます。その後、映画でいうと、『RUN!-3films-』というオムニバス映画。その中の『追憶ダンス』という短編で篠田諒さんとW主演をしたときに、台本の読み合わせから、丁寧に作品作りができたんです。

 ロケハンにも連れてってもらって、そこで芝居を想像しながら役作りもできましたし、それをきっかけにいろんな映画祭に出向き、いろんな縁ができました。

 演劇でいうと25歳のときにやらせてもらった一人芝居「芥川龍之介の恋」。そこでライブ感に代表される演劇の面白さに気づかせてもらいました。この2作が、いろいろ悩みながらお芝居をやっていた二十代の僕の中で大きな転機となりました。

――現在34歳である木ノ本さんですが、三十代での転機となった作品は?

 津田寛治さんとご一緒させていただいた、ドラマ仕立てのグルメ番組「京都・味の大捜査線リターンズ」です。目の前の料理について、自分の言葉でちゃんと紹介する・伝えるというトーク力やリアクションについて学ばせてもらった番組でした。

 そして今回、『THIS MAN』に携わらせていただいたことも、大きな転機になったと思います。俳優さんがたくさんいらっしゃる中で、主役として作品に関われることって、なかなかないことだと思うんです。しかも、今回も津田さんとご一緒させていただきました。

――最新主演作となるサスペンス・スリラー『THIS MAN』では、出口亜梨沙さんと愛娘を持つ夫婦役を演じられています。

 そろそろ年齢的にも役柄的にも夫婦や子供がいる役をやりたいと思っていたんです。だから、撮影中は「自分にとって大事な人が突然、不幸に見舞われたらどうするんだろう?」「自分が不幸の渦中にいるとき、何ができるんだろう?」と、ずっと家族について考えていました。

 八坂義男という登場人物を演じるうえで、常に緊張状態だったことは、自分にとって挑戦だったかもしれないです。

2024.06.07(金)
文=くれい響
撮影=細田忠