「レミゼ」抜擢を機に、次々に人気作のステージに

――とはいえ、07年に「レ・ミゼラブル」のオーディションでマリウス役に大抜擢されます。

 オーディションは大学1年のとき。ダメもとでチャレンジしてみようと思ったんですよ。合格は確かにうれしかったのですが、声変わりして一度舞台を下りたとき「次に舞台に立つときはマリウスとして立ちたい」と思っていたので……。小6のときに、初めて石井一孝さんのマリウスを見てからの夢。周りからは「大学生なのに、ラッキーだね」と言われたりもしましたが、自分的には「やっと、このときが来た」でした。

――つまり、その時点で長年の夢が叶ってしまったわけですが、キャリアを重ねていくうちに、夢も変わっていきますよね?

 そうですね。「ミス・サイゴン」のクリス、「ロミオ&ジュリエット」のロミオ、「モーツァルト!」のモーツァルトといった役を演じたいと思うようになって、これらの役も後々演じることが出来たわけですが、これは決して大袈裟なことじゃなくて、絶対に自分が演じたいとか、自分がこうなるんだという気持ちがあれば叶うと思っているんですよ。あと、そうやって自分で思ったことは、必ず事務所の方だったり、取材のときだったり、必ず周りの人に口に出して言うようにしています。

――それでは俳優として転機を迎えた作品は?

「モーツァルト!」です。素晴らしい役者さんたちが立たれてきた100年の歴史がある帝国劇場のステージに主演として自分が立つことは、歌手の方でいう紅白歌合戦みたいだと思っていましたから。23、24歳のときで、Wキャストの(井上)芳雄さんに比べられることや、プレッシャーによる恐怖しかなかった。でも、役柄のテーマが“ありのまま”だったんです。「僕は僕のままでいい!」「このままの僕を愛してほしい!」というセリフが実際あるように、彼の生き方や置かれている状況にリンクすることで助けられた気がするんです。初日を迎える直前には「みんながどう思おうが、これでクビになろうが、一生ミュージカルに出られなくなろうが構わない!」と思えるようになっていました(笑)。今、自分ができることを全力でやろうと思えたときから、恐怖やプレッシャーを乗り越え、たとえばロミオだったり、どんな役が来ても、どんな状況でも、怖いものはなくなりましたね。

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2014.02.25(火)
文=くれい響
撮影=山元茂樹