ゼロから役に向き合うことのできる「レディ・ベス」

――先輩である井上芳雄さんとはヴォーカルユニット「StarS」のメンバーとして活動されていますが、最年少としての立ち位置みたいなものはありますか?

 野球部のキャプテンをやっていたこともあって、地元で山崎軍団(笑)を率いるように本来の僕は仕切るのが好きなんです。でも、StarSは年上のお兄さん2人とのトリオなので、仕切るのは芳雄さんにお任せして、最年少の僕はボケてツッコんでもらおうと思ったら、浦井(健治)さんがずっとボケ倒しているんですよ(笑)。どっちもいるから、最初はどうしようかと悩みましたね。普段は浦井さんにツッコんでいても、それを舞台上でやったら「年下のくせに……」と言われるんじゃないかとか、周りの目も怖かったし。でも、3人一緒にいることで、普段の関係のままでいいや、と思い始め、今では楽しくやらせてもらっています。そうしたら、いつの間にかいちばん冷静に2人を見ている“お母さん的存在”と呼ばれるようになってました(笑)。

――もっとミュージカルを世に広める目的で結成された「StarS」ですが、昨年の日本武道館公演を終えて、どのような感触を得ていますか?

 帝劇100周年のときに「3人でやりたいね」と話し合っていたことが実現したように、StarSも言ったことを実現させた一例ですよね。武道館ではピアノを弾いたり、バック転したり、僕は演歌(「箱根八里の半次郎」)も歌いました。お前は何者なんだというぐらいなんでもやりました。それはミュージカルという仕事をしている自分たちの幅の広さを証明したようなもの。3人なら、どんなことにもチャレンジできるような気がするんです。StarSはミュージカルファンの方への感謝の場でもあり、一人でも多くの人にミュージカルを知ってもらう場でもあり、僕たちの夢がある場だなと思っていますね。今も3人で、またお客さんを驚かせることをやりたいねって話し合っています。

――さて、今回上演される「レディ・ベス」では、吟遊詩人ロビン・ブレイクを演じられますが、どんな山崎育三郎が見られるのでしょうか? 意気込みも含めて教えてください。

 ミュージカルというと、ヨーロッパの作品が世界を回って日本にやってくることが多いけれど、「レディ・ベス」は世界初演の舞台。そのぶん世界が注目しているので、スタッフ、キャストはみんな気合いが入っています。再演でないから、僕自身も自分がゼロから役に向き合える数少ない作品だと思っていますし、お客さんにも何のイメージもない。僕自身、絶対に型にハマりたくないし、「山崎だったら、こんな芝居で、こんな歌い方」と思われたくないんです。毎回違う自分で登場したいし、自分でも新しい自分に出会いたい。だから、今回のロビンも違うアプローチで役に挑めたらいいな、と思っていますね。

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2014.02.25(火)
文=くれい響
撮影=山元茂樹