「エリザベート」「モーツァルト!」を手がけたスタッフがエリザベス1世の波乱の人生を描く、ミュージカル「レディ・ベス」。日本が世界初演となる期待作で、吟遊詩人ロビン・ブレイクを演じる山崎育三郎。ミュージカル界の新たなプリンスと呼ばれる彼の、ミュージカルに懸ける思いを聞く。

野球少年からミュージカルの道へ

――1997年、全国童謡コンクールにて審査員特別賞を受賞され、その後に小椋桂さんのミュージカル「フラワー」に主演された山崎さんですが、やはり幼少の頃から歌手、もしくはミュージカル俳優を目指されていたのですか?

 じつは、小学校の6年間は野球少年だったんです。しかも、少年野球(クラブ)のキャプテンでピッチャー。6年生のときは全国でベスト8になるほど、本格的にやっていました。でも、それと同時に、母親が歌好きだったこともあって小3ぐらいから週1で歌のレッスンに通い始め、すぐに童謡コンクールに出たり、ミュージカルのオーディションを受けるようになりました。そうやってステージに立つうちに、将来はミュージカル俳優になりたいと思ったんです。その後、野球の監督に「両立はできないからやめろ」と言われたのを機に、夢をミュージカル俳優一本に絞りました。

――声優や俳優としての仕事もされながら、変声期後に本格的に声楽を学ばれるわけですよね。

 中学は地元の学校に通ったんですが、高校は声楽を本格的に勉強したいと思ったので、音大の付属高校(東邦音楽大学附属東邦高等学校声楽科)に行きました。入試ではピアノのほかに、先生がピアノで弾いた音を譜面に書く実技や、いきなり渡された譜面通りに歌う実技など、専門的な勉強をしなければいけなかったのですが、なんでミュージカルやりたいのに、こんなことしなきゃいけないんだと(笑)。でも、今となってはやっておいてよかったと思います。ミュージカル俳優になりたいと思っても、これをしたら正解みたいなものはないんですよ。僕自身も大学を卒業したら入ろうと思っていた劇団四季だったり、宝塚だったりあるとは思うんですが、現在ミュージカル俳優として活躍されている方のプロフィールを見ると、多くの方が音楽学校に行かれているんですよね。

――2004年には「ソニーミュージックSDオーディション」を受けられますが、どういう経緯だったのでしょうか?

 高2のときにアメリカに1年留学していたんですが、そのあいだに母親が勝手に応募してしまったんです。それで帰国したときに、特にジャンルは問わない、このヴォーカルオーディションを受けて最後の10人に残ったんですが、そのなかにはYUIさんもいましたね。僕にもソニーさんからお声を掛けていただいたんですが、そのときはどこか頑固で「僕、ミュージカルやりたいんで、歌手には興味ないんですよ」と断ってしまったんです。今思えば、歌手やりながら、ミュージカル俳優目指せばよかったと思うんですよね(泣)。

<次のページ> 「レミゼ」抜擢を機に、次々に人気作のステージに

2014.02.25(火)
文=くれい響
撮影=山元茂樹