滞仏20年の料理ジャーナリスト/翻訳家、伊藤文。錚々たるシェフたちからの信頼を得る料理コラムニスト/コンサルタント、セバスチャン・リパリ。花の都の美食に通じたふたりの男女が、いま訪れるべき最高のレストランについて縦横無尽に語り合う。ここに、フランス料理の真髄がある。

» 第1回 アラン・デュカスが手がける「ル・ムーリス」の至高の美食
» 第2回 自家農園生まれの野菜の滋味に誰もが驚嘆する名店「アルページュ」
» 第3回 若き日本人シェフが腕を振るうパリの1ツ星店「レストラン・ケイ」
» 第4回 芸術性と職人技に目をみはる極上の魚介専門店「レッシュ」

 ホテル「ル・ブリストル」は、2011年、はじめて設定されたホテル格付けの最高位“パラス”の認定を受けました。同年にはメインダイニングがリニューアルによって生まれ変わり、名前も「ル・ブリストル」から「エピキュール」に。ホテルのオーナー、マダム・オテカー女史の指揮で、世界的に知られるインテリアデザイナー、ピエール・イヴ・ロション氏がインテリアを手がけ、中庭に面する客室を、ブリストルならではの上質の極致に仕立て上げています。
 1999年より15年間、料理長を務めるエリック・フレションは、「タイユヴァン」や「トゥール・ダルジャン」、「ル・クリヨン」などの最高級レストランで腕を鍛錬して、M.O.F.(フランス最高職人章)にも輝いている実力派。2009年に3ツ星を獲得し、さらにエピキュールという新しい舞台で、その洗練を深くしています。

フランス料理を次世代へと伝えるエリック・フレション

王道“ブレス産肥育鶏のベッシー包み”。2回に分けてサービスされるが、こちらは1回目のサービスの皿。

セバスチャン 今日は、君の大好きなアドレスの1つに連れて来てくれてありがとう。長いこと、ここで食事をする機会がなかったから。エリック・フレションの名料理を再体験できて、幸せだったよ。

アヤ 私もセバスチャンとこの素晴らしいひとときを体験できて嬉しかった。ホテルの最高位“パラス”の認定を受けた場所という心地よさ、3ツ星の名声に違わぬ料理とサービスに浴すことができたわ。

静かな中庭に面した、上質なブルジョワ風の客室。朝食の評判も良い。

セバスチャン フレションの料理を味わって感じたのは、彼はものすごく繊細な料理人だということと、フランス料理を次世代に伝えていく力のある人間だということだ。

アヤ 確かに、フレションもさまざまな偉大なるシェフたちを輩出した「ル・クリヨン」の元料理人、クリスチャン・コンスタンの下にいたものね。次世代へ伝えていく、そんな師のありかたを継承しているかもしれない。

セバスチャン コンスタンはもちろん、アラン・デュカスやアラン・パッサールに並んで、こうした伝えることをも使命としたシェフたちは大好きだな。例えば、ル・クリヨンの料理長クリストフ・アッシュ。彼もエリックの下で多くのことを学んでいる。彼も、フランス料理の未来を支える料理人の1人。こうした料理人を育て上げたフレションに感謝したいよ。

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2014.02.19(水)