滞仏20年の料理ジャーナリスト/翻訳家、伊藤文。錚々たるシェフたちからの信頼を得る料理コラムニスト/コンサルタント、セバスチャン・リパリ。花の都の美食に通じたふたりの男女が、いま訪れるべき最高のレストランについて縦横無尽に語り合う。ここに、フランス料理の真髄がある。

» 第1回 アラン・デュカスが手がける「ル・ムーリス」の至高の美食
» 第3回 若き日本人シェフが腕を振るうパリの1ツ星店「レストラン・ケイ」
» 第4回 芸術性と職人技に目をみはる極上の魚介専門店「レッシュ」
» 第5回 最高峰ホテルで味わう真のリュクス 心地よい3ツ星「エピキュール」

 ロダン美術館入り口の斜向いにある3つ星レストラン「アルページュ」を指揮するのは、天才シェフ、アラン・パッサール。1986年に、パッサールの師、ヌーヴェル・キュイジーヌの旗頭だったアラン・サンドランスから当店を譲り受けています。10年後の96年には3つ星を獲得。“肉の魔術師”と呼ばれて、加熱調理の名手としてその名を馳せていましたが、2000年頃から野菜料理にこだわって、自身の菜園も持ち、野菜料理のスペシャリストと呼ばれるようになりました。パリの3つ星レストラン「アストランス」のシェフ、パスカル・バルボーなど、多くの優れた弟子を輩出しているのも特徴です。

世界でも3つの指に入る至高のレストラン

野菜のスムールサラダ。根菜の甘味、アルガンオイルのハーモニーが絶妙

セバスチャン 偉大なるアラン・パッサール!

アヤ そうね、今日は、巨匠アラン・パッサールについて話しましょうか?

セバスチャン 世界中の星付きレストランを経験してきたけれど、アルページュでは、いつもこの上ないひとときを過ごすことができるよ。素材の味わいはしっかりと操られていて、色合いも美しく、優れた感性を感じることができるんだ。

アヤ 素材が語りかけてくるような素晴らしい料理よね。

セバスチャン 世界でも、3つの指に入るレストランといってもいいよ。何度か、アランの取材で映像を撮ったことがある。例えば鴨の切り分けなど、その立ち居振る舞いの正確さには驚かされる。

アヤ アランは比類のない肉焼き師ですもの。美しい所作から素晴らしい火通しが生まれるの。私は、オマールの加熱調理を見たけれど、それは美しかったわ。それを縦に4本に切り分ける、その様子も素晴らしかった。

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2014.02.10(月)