今、花の都では、経験値の高いシェフたちが次々と新たな店をオープンし、ガストロノミーという愉しみに、改めて目が向けられ始めている。
アーティスティックな味覚と空間を提供する4軒をここにご紹介。今回は「洗練の空間で満喫する美しいハーモニーの料理」。
» 第2回「魂の奥に眠った記憶を呼び覚ます“香り”のコース」
» 第3回「名ソムリエと名シェフが奏でる至福の一皿」
» 第4回「滞仏四半世紀の邦人シェフが極めたフレンチ」
洗練の空間で満喫する美しき味覚のハーモニー
ル・セルジャン・ルクリュトゥール
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右:新鮮なサバに、ラディッシュ、カブのスライスを合わせた。シードルのヴィネグレットに、フェンネルの葉、乳清と西洋ワサビ風味の氷添え
パリ珠玉の島サン=ルイの目抜き通りに、昨年秋オープンした「ル・セルジャン・ルクリュトゥール」は、あらゆるエクセランスの結晶だ。
旧い街並みが続く美しい通り、黒塗りの扉を開くと、近未来的な空間が待ち受けている。インテリアを手掛けたのは、バカラのデザインなどでも知られる新進気鋭のスペイン人デザイナー、ハイメ・アジョン氏。木の梁の見える空間には、アジョン氏がここのために、特別にデザインしたヴェネチアン風マスクや花瓶、さらに椅子、ランプシェード、大鏡などが、品よく設えられているのが目に飛び込んでくる。
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右:地下ルームのショーケースの貯蔵庫で牛、豚、鳩などを熟成
料理を手がけるのは、ミシェル・ブラス氏やロンドンのコンラン卿の店などで腕を磨いたアントナン・ボネ氏。選び抜いた素材を、これ以上ないという状態で組み合わせ、香りをつけて出すことを信条とする。
例えば牛肉や鳩、豚などの肉は地下のカーヴでしっかりと熟成させてから炭火で焼き、魚はロワール地方で一本釣りした新鮮なものを活け締めにする。それらとさまざまな野菜やキノコ、ハーブ、果物を調香師のように組み合わせ、美しいハーモニーの料理を次々に編み出す。ランチで、計6~9皿のコースも、軽快なリズムで堪能できるのだ。
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右:3ツ星ミシェル・ブラスの薫陶を一身に受けた精鋭/シェフのアントナン・ボネ氏。世界中で腕を鍛え上げ、オープン直後の今年1ツ星獲得
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photographs:Shiro Muramatsu
text:Aya Ito