フォンテーヌブロー城エントランスにも近い、商店街の一角にある

 昨年2012年の1月、パリから電車で40分ほどのところの町フォンテーヌブローにオープンしたレストラン「ラクセル」が、今年2013年版ミシュランガイドで見事一つ星を獲得しました。

手前右がオーナーシェフの後藤さん、左隣がヴァネッサ夫人。日仏を交えたスタッフに囲まれる

 シェフは日本人の後藤邦之さん37歳。昨年は、オープンしたばかりのころに、ゴーミヨガイドフランス版で、「2013年期待のシェフ」賞にも輝いています。実は、「ラクセル」をオープンする直前まで2年間シェフとして働いていた、ブルゴーニュ・ボーヌ市にあるレストラン「オステルリー・ル・セードル」でも、すでにゴーミヨ、ミシュランともに期待の若手シェフとして評価されていたのでした。

ヴァネッサ夫人が描いた絵がさり気なく飾られている、シンプルで落ち着いた店内

 後藤さんは、2001年に渡仏して、ヴィシー市の新進気鋭のシェフ、ジャック・デコレに師事したのち、サン・テミリオンの2ツ星フィリップ・エシュベストのもとで腕を磨き、着実に力をつけてきた人です。

 その間に、フォンテーヌブローそばの「プレミス」というレストランで、のちに後藤夫人となる、当時は料理人だったヴァネッサさんに出会い、いつしか2人でレストランを開くという夢を持って、これまで歩んできました。

 ヴァネッサさんが、「ラクセル」のホールを切り盛り。居抜きで入ったシンプルな店に、美しく花を生けたり、店を引立てるオブジェを飾ったりなど、後藤さんのクリエーションを陰ながら支えています。

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text:Aya Ito