パリ10区、7番線ポワソニエール駅そばに、8月末オープンした“アブリ”は、今は1カ月先まで予約が取れないほどの人気店です。オーナーは、料理人の沖山克昭さん36歳と、ホール責任者の森下亮さん39歳の日本人2人。パリの名だたるガイドもベタ褒めで、口うるさい美食評論家たちでさえ、口を揃えて“新学期の注目ナンバーワン”との評価をしています。

ランチ22ユーロコースの前菜。イカとアーティチョーク、ジャガイモのソテー

 シェフの沖山さんは、河野透さんなど、日本のフランス料理界を代表するシェフに師事してから渡仏し、フランスでは、ジョエル・ロブションの“ラ・ターブル”、“タイユヴァン”などを経験したという腕の持ち主ですから、料理は文句なしのクオリティ。それに加えて、ランチはアントレ2皿、魚料理、肉料理、デザートで22ユーロのコース、ディナーはアントレ3皿、魚料理、肉料理、デザートで38.50ユーロのコースという、考えられないようなリーズナブルな価格で提供してくれています。沖山さんの相棒、森下さんは、故郷岡山県で、ゼロから店を立ち上げて、年商1億円を超える店にまでしたという経験のある、ビジネスの才覚の持ち主ですから、よくよく考えての値段設定なのだとは思いますが、ある意味挑戦だと思います。

シンプルで正確な火通し、オリジナルな組み合わせで評判

<次のページ> 日本人の才能ある人たちの仕事を発信していきたい

text:Aya Ito