北部地方の海沿いの町ル・トゥケは、その美しい砂丘の海岸で有名で、ランドセーリングが初めて競技として開催された場所としても知られています。
そこから車で20分ほどの内陸の町モントルイユ・シュール・メールの城壁外に“ラ・グルヌイエール”というレストランがあるのですが、現在、私たち料理関係者の間では、一番に話題に上る場所といってもいいでしょう。「あの、ラ・グルヌイエールに行った?」というのが、挨拶言葉になってしまうくらい、と言ったら、大げさかもしれませんが。
ラ・グルヌイエールのシェフはアレクサンドル・ゴーティエといって、1979年生まれ。
2003年に父が指揮を取っていたこの店を引き継ぎ、昨年春には大々的な改装を済ませ、彼自身の世界を繰り広げることのできるステージを手に入れて、より一層の評判を聞くようになりました。
今の今まで私が行かなかったのは、北部地方にあまり魅力を感じていなかった、どうしても寂しいイメージが伴っていたから。しかし、そのイメージを頭の隅において、この評判のレストランに行ってみることにしました。
パリの北駅から最寄りの駅ラング・ドゥ・フリエールまで約2時間。何もない荒涼とした風景は線路沿いだけで、モントルイユは、中世の城壁に囲まれた由緒のある町。また海へと流れ込むカンシュ川が林の中を流れる、心癒される美しい風景も広がっています。
夏になると、小舟に乗って、カンシュ川を下り、ル・トゥケまで出ることができるそう。冬ではありましたが、レストランの周りを美しい緑が覆っていて、先入観は、あっという間に払拭されました。
そして肝心のレストランですが、庭に向かって張り出したガラス窓で覆われた広い客間に、席数は約50席ほど。
そして何よりも驚いたのは、客室の一角の延長線上にある、客室と同じ広さの巨大なオープンキッチンです。インダストリアルなかなりモダンなインテリアで、フランスというよりは、ロンドンのアトリエを思わせる、硬質でクリエイティブな空間といったらいいでしょうか。
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text:Aya Ito