古代から19世紀の半ばまで約35万点の作品を収蔵し、展示品だけでも約3万5000点という比類なき規模を誇る、パリのルーヴル美術館。これだけは見逃せないという名画や展示品を紹介。今回は人気のミステリーコースの作品です。
いずれも一筋縄ではいかない作品ばかりなので、観察力と想像力を発揮すべし。さて、名画の謎は解けるかな?
ミステリアスな名画、意味不明な作品を推理と妄想で賞玩す
西洋絵画を観ていると、よく分からない謎めいた絵に出くわすことがときどきある。というより、実は作品の意味が明確に分かる絵の方が少ない。後世の人間が簡単に解明できることなど高が知れているなどというと、美術史学が白旗を揚げたみたいだけれど、だからこそ面白いという見方も成り立つ。調べる余地、想像の余地がたくさんあるのだから。
ルーヴルの絵画で不可思議な印象をもたらすのは、2人の美しい女性が入浴しているあの絵だろう。画面左の女性が右の女性の乳首をつまみ、右の女性が指輪を見せている、優美で官能の薫り高いフォンテーヌブロー派の作品だ。その前に立つと、あなたは思わず見とれ、そして首を傾げるだろう。この美女たちは誰で、いったい何をしているのかと。伝承によると、右の女性は国王アンリ4世の寵姫ガブリエル・デストレ、左はその姉妹ビヤール公爵夫人。一説には、2人の謎めいた仕草は、ガブリエルが国王の私生児を身ごもり、正式の結婚を望んでいることを示し、奥の部屋では侍女が生まれてくる赤子の産着を編んでいるのだという。だが最終的な結論は出ていない。
ちなみに、国王を夢中にさせたガブリエルは王妃の座へという願いかなわず、悲惨な最期をとげる。アンリ4世の4人目の子供を身ごもっているときに、26歳で突然死したのだ。毒殺の疑いがあるのは、彼女を警戒する敵が多かったからだが、真相は闇の中。子供のいない王妃マルゴとの離婚を認められたアンリ4世が、ガブリエルの死後に再婚した相手こそ、「物語と事件」(CREA Traveller 2013年夏号 P78~に掲載)で紹介したマリー・ド・メディシスで、こちらは愛のない政略結婚であった。
supervision:Atsushi Miura
plan / realization / text:Satsuki Ohsawa
photographs:Yuji Ono
coordination:Yûki Takahata