今、花の都では、経験値の高いシェフたちが次々と新たな店をオープンし、ガストロノミーという愉しみに、改めて目が向けられ始めている。
アーティスティックな味覚と空間を提供する4軒をここにご紹介。今回は「邦人シェフが極めたフレンチ」を紹介。
» 第1回 「洗練の空間で満喫する美しいハーモニーの料理」
» 第2回 「魂の奥に眠った記憶を呼び覚ます“香り”のコース」
» 第3回 「名ソムリエと名シェフが奏でる至福の一皿」
滞仏四半世紀の邦人シェフが極めたフレンチの真髄
ラ・ターブル・ダキヒロ
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右:肉厚の川スズキのスライスの表面をこんがりと焼いた白アスパラ添え。オリーブのスライスをのせた。香り高いオイルのエマルジョンソースと。38ユーロ
名百貨店「ボン・マルシェ」の裏手にある「ラ・ターブル・ダキヒロ」。16席のみのこぢんまりとした店だが、細心の心配りがあふれ、チャーミングなセンスも垣間見られる、心地よい空間だ。オーナーシェフは日本人の堀越昭浩氏。1991年から何と約20年の間、ヴォージュ広場にある伝説的な3ツ星レストラン「ランブロワジー」に勤めていたという人物だ。ようやく独立を決め、2012年1月に自分の城を構えた。
日本で修業をしているときから「ランブロワジー」に憧れて、渡仏してから縁あって働くことになったそう。シェフであるベルナール・パコー氏はお手本、という堀越さん。魚部門のシェフを長年担当し、フランス料理の真髄を肌で学んできた。
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右:エントランスに差し込まれた本日のメニュー
オープンキッチンでの料理は一人で担当する。行き届いた料理を出したいからと、メニューは魚に限定することに。以前から付き合いのある、老舗の魚屋「ドーム」で、自信をもって提供できる上質なものを仕入れている氏は、「なるたけ素材には手を加えないように注意して、そのもののシンプルな味わいを皿に出したい」と語る。旬の素材を、研ぎ澄まされた加熱の技と調味、組み合わせによって料理する実力は、長年かけて培った揺るぎないもので、名だたる美食批評家たちも、パコー氏直伝の料理が味わえる店と讃えている。
また、デザートも得意。フレッシュで繊細な、食卓の締めとなる完璧な一皿には、一曲の音楽を堪能したかのような、豊かな満足感がある。
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右:3ツ星の名店で修めた魚料理はパリに誇る味/オーナーシェフ堀越昭浩氏。1987年に渡仏し、3ツ星名店「ランブロワジー」に勤める
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photographs:Shiro Muramatsu
text:Aya Ito