皮付きでサービスされるタマネギに驚いた
アヤ パリ16区にあるホテル「サン・ジェームス」に最近行ったのだけれど、洗練された料理は目を見張るものがあった。料理人はヴィルジニ・バスロという女性だったわ。職歴を聞いたら、エリックのもとに9年もいて、セカンドにも昇格したということ。彼女もエリックからフランス料理の真髄を身につけていると思ったわ。
セバスチャン エリックは、まだ若い頃にブリストルで働いたことがあるそうだ。そして腕を磨き上げたときに、ブリストルの料理長に任命された。こうしたストーリーはなんとも美しいと思わないか?
アヤ 本当ね。また、そんなあり方が、このホテル全体としての魅力だと思うわ。リュクスの極みがあるけれど、人の心がこもっているというか。ストーリーが流れているの。
セバスチャン 料理には、ゆっくりとした、ソフトなリズムで進むエレガンスがあったな。
アヤ しかも、パリの中心にいることをすっかり忘れさせてくれる中庭を眺めながらの食事は至福よね。
セバスチャン 君が頼んだアントレは、そんな風景に馴染んでたよ! “ロスコフ産のローズタマネギ”だっけ?
アヤ ええ、皮付きでサービスされたのはなかなかの光景だったわ。サービスの人が、その皮を目の前で取り除いてくれるのにも驚きがあった。カルボナーラ風味のソースの上に落とされた柔らかい身は、とてもまろやかで甘くて。
セバスチャン 僕の頼んだ“ソローニュ産キャビア”もそれは素晴らしかった。キャビアのボックスに入れられて出てくるんだが、下にはきめ細やかなジャガイモのムスリーヌが敷かれている。アドックの燻製香も仄かにした。
2014.02.19(水)