◆『モン・パリ』

 パリに暮らすマルコは体調不良でかかった病院の医者から、妊娠と診断される。やがてマルコは世にも珍しい「男性の妊娠」としてメディアにも露出してゆく。一方、それまで男性中心社会で十分ではなかった“ピルや中絶を選択する権利”が当然のものになるかもしれないと女性たちは新たな社会の幕開けに浮き足立つ。

 女性だけが背負ってきた出産を男性もできるようになるというユニークな物語によって、「母」とは一体誰なのかを根本から揺るがす。

『モン・パリ』

U-NEXTで配信中

◆『ビリーブ  未来への大逆転』

 アメリカ連邦最高裁の裁判官として、法における性差別の問題などに取り組んだルース・ベイダー・ギンズバーグの伝記的映画。この映画では父親が外で働いて家計を担い、母親が家で家事や育児に勤しむ、という性別役割分業が解体され、むしろ社会で活躍する母親を父親が陰で支える家庭の在り方が提示されている。

 また、不当な出来事にはきちんと声を上げていくべきだとする娘の姿にルースが感銘を受ける場面もあり、次世代を生きる娘と母の絆も描かれている。

『ビリーブ  未来への大逆転』

U-NEXTで配信中

2023.09.16(土)
Text=Mizuki Kodama

CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

母って何?

CREA 2023年夏号

母って何?

定価950円

CREAで10年ぶりの「母」特集。女性たちにとって「母になる」ことがもはや当たり前の選択肢ではなくなった日本の社会状況。政府が少子化対策を謳う一方で、なぜ出生数は減る一方なのか? この10年間で女性たちの意識、社会はどう変わったのか? 「母」となった女性、「母」とならなかった女性がいま考えることは? 徹底的に「母」について考えた一冊です。イモトアヤコさん、コムアイさん、pecoさんなど話題の方たちも登場。