◆『パラレル・マザーズ』
フォトグラファーのジャニスは予期せぬ妊娠の末、病院で同室となったまだ10代のアナと同時期に出産する。運命的な出逢いを果たし無事「母」となったふたりだが、のちにお互いの子どもを取り違えていたことが発覚してしまい……。
この映画ではふたりの女性がパートナーシップを結び、ともに子育てに励む様子も描かれている。血の繋がっていない子どもを育てていたことがわかったとしても、その時間と愛情はなお消えないことを痛感する「母」の姿が、ここにはある。
『パラレル・マザーズ』
U-NEXTで配信中
◆『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
コインランドリーを経営しながら確定申告に翻弄されるエヴリンはある日突然、別宇宙の夫から娘の姿をした強大な敵を倒す使命を託される。カンフーを究めたのちに煌びやかなドレスを纏ってスターとしてレッドカーペットを歩く人生、レストランのシェフとなりアライグマを頭に乗せる同僚と張り合う人生、指がソーセージの世界で親密な女性と一緒に生きる人生……。
日常に疲弊した「母」のありえたかもしれないいくつもの人生を奇想天外な物語で提示してゆく本作は、「母」という存在の未知なる可能性に満ちている。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
2023/9/6発売 DVD 4,290円
発売・販売元：ギャガ
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児玉美月（こだま・みづき）さん
映画執筆家
『キネマ旬報』、『文學界』、『文藝』、『ユリイカ』、劇場用パンフレットなどに多数寄稿。共著に『反＝恋愛映画論』（Pヴァイン）、『「百合映画」完全ガイド』（星海社新書）がある。
2023.09.16(土)
Text＝Mizuki Kodama
CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
この記事の掲載号
CREA 2023年夏号
母って何？
定価950円
CREAで10年ぶりの「母」特集。女性たちにとって「母になる」ことがもはや当たり前の選択肢ではなくなった日本の社会状況。政府が少子化対策を謳う一方で、なぜ出生数は減る一方なのか？ この10年間で女性たちの意識、社会はどう変わったのか？ 「母」となった女性、「母」とならなかった女性がいま考えることは？ 徹底的に「母」について考えた一冊です。イモトアヤコさん、コムアイさん、pecoさんなど話題の方たちも登場。
