絶滅のおそれがあるジャイアントパンダは妊娠から成長するまで、奇跡の連続。永明が偉大な父と称されるのには理由がありました。
赤ちゃんの体温を下げないよう母親が抱き続ける
![1歳半~2歳ごろ迎える親離れは、成長に向けた大きなステップ。
【日本】「良浜&楓浜(らうひん&ふうひん)」楓浜の誕生時はコロナ禍で中国からスタッフが来日できず、日本人だけで対応した。/2022.4.11撮影 @アドベンチャーワールド](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/1280wm/img_f38e1f71cca8db8902e7798719e32628169061.jpg)
【日本】「良浜&楓浜(らうひん&ふうひん)」楓浜の誕生時はコロナ禍で中国からスタッフが来日できず、日本人だけで対応した。/2022.4.11撮影 @アドベンチャーワールド
愛らしい姿からは想像しづらいが、ジャイアントパンダが無事に生まれて育つには多くのハードルがある。まず、自然交配(交尾)して受精できる期間は一般的に一年のうち1~3日だけ。さらに互いの好みや相性もあるので、必ず交配するとは限らない。
交配して妊娠し、出産しても安心できない。赤ちゃんは体重約100~200グラムと、母親の1000分の1程度で生まれるので母親に誤って潰されることもある。赤ちゃんの死因の多くは圧死か母乳を飲めないことによる。
![【フランス】「ホァンホァン&ユエンモン」2017年8月4日生まれのユエンモンは2023年7月4日に繁殖のため中国へ行く予定だと発表された。/2018.8.4撮影 @ボーヴァル動物園](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/1280wm/img_f832b26f6522fa11d8bca246a4beedce60238.jpg)
![【日本】「良浜&彩浜(らうひん&さいひん)」わずか75gの体重で誕生した彩浜は、生まれた当初、自力で母乳を吸えず、命が危ぶまれた。/2018.9.13撮影 @アドベンチャーワールド](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/1280wm/img_38f9a25f589deb158a778fa3a5179e0a68082.jpg)
しかも赤ちゃんは毛が十分に生えておらず、体温が下がってしまう。そのため母親が抱き続け、舐めて温める。赤ちゃんの体がピンクに染まるのは母親の唾液が付いたためで、愛情の証だ。授乳も大切。特に出産直後に出る初乳は細菌などから体を守る成分を含むので、赤ちゃんが飲まないと命に関わる。こうして母親は、ほとんど休まずお世話する。
一方で育児放棄する母親もいて、明確な理由は分かっていない。
![【ドイツ】「モンモン&モンシャン&モンユエン」モンモンは2019年8月31日にオスの双子を生んで育児に奮闘。/2020.2.9撮影 @ベルリン動物園](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/3/1280wm/img_c3c8863f571154f74dcb6b6d22cb9d95108326.jpg)
また、パンダは約45%の確率で双子を生むが、通常は1頭しか育てない。1頭育てるだけで大変なためだ。見捨てられた赤ちゃんが野生下で生き延びるのは難しい。
![子どもは危険を避ける方法を母から学ぶ。
【台湾】「ユエンユエン&ユエンバオ」次女のユエンバオは2020年6月28日に生まれ、2023年1月3日に親離れした。/2022.11.24撮影 @台北市立動物園](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/7/1280wm/img_27afef701e11a3cdb198c63491186b0b61145.jpg)
【台湾】「ユエンユエン&ユエンバオ」次女のユエンバオは2020年6月28日に生まれ、2023年1月3日に親離れした。/2022.11.24撮影 @台北市立動物園
![遊びながら、ほかのパンダとの関わり方を教えることも。
【日本】「良浜&結浜(らうひん&ゆいひん)」結浜は2016年9月18日誕生。メスの子どもとしては珍しく、母親によく甘えていた。/2017.9.18撮影 @アドベンチャーワールド](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/e/1280wm/img_be22450dba3aa384108114d712cde01371157.jpg)
【日本】「良浜&結浜(らうひん&ゆいひん)」結浜は2016年9月18日誕生。メスの子どもとしては珍しく、母親によく甘えていた。/2017.9.18撮影 @アドベンチャーワールド
生後1カ月ほどになれば体が毛で覆われ、体温を維持できるようになる。そして1歳半~2歳ごろに母親と別れる(父親とは最初から一緒にいない)。パンダは群れをつくらず、縄張りの中で単独で生きる動物だ。
2023.09.18(月)
Photographs & Text=Miho Nakagawa
CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。