「CREA」2023年夏号は、10年ぶりに「母」をテーマにした特集号です。
女性たちにとって「母になる」ことがもはや当たり前の選択肢ではなくなった日本の社会状況。政府が少子化対策を謳う一方で、なぜ出生数は減る一方なのか? この10年間で女性たちの意識、社会はどう変わったのか? 「母」となった女性、「母」とならなかった女性がいま思うことは? 徹底的に「母」について考えた一冊です。
CREA 2023年夏号
母って何?
特別定価950円
CREA WEBでは、「CREA」2023年夏号のコンテンツの一部を大公開します!
2022年8月にryuchellさんとの婚姻関係の解消と「新しい家族の形」を発表したタレントのpecoさん。ryuchellさんからのカミングアウトをどのように受け止めたのか。そして4歳の最愛の息子にどのように伝えたのか、心の内を率直に語ってくれた。ここではインタビューの一部を抜粋して公開。
胸を張って、息子に説明できる
モデル、タレントとして活躍するpecoさんは、公私にわたるパートナーのryuchellさんと2016年に結婚。2018年に第一子が誕生する。23歳で出産したpecoさんだったが、その4年後、ryuchellさんからセクシュアリティについてのカミングアウトを受け、婚姻関係の解消を選択した。
ryuchellからのカミングアウトを受けた直後は、正直キッチンで泣くこともありました。でも、どんなにショックなことがあっても子育ては待ったなしなんですよね。クヨクヨしてる時間もないから、前を向くしかない。そういう意味でも、本当に子どもに助けられました。
この先、ryuchellがどんな見た目になろうとも、胸を張って変化の理由を息子に説明します。大変なこともあるかもしれませんが、私たちは親としての覚悟と責任を持って息子を守り続けよう―そうryuchellと話してるんです。
pecoさんがryuchellさんと交際をはじめたのは19歳の時、r yuchellさんから告白されたのがきっかけだった。21歳のときに結婚を決めたのも、プロポーズを受けたから。「ryuchellからたくさん愛を受け取った」と語るように、これまでの恋愛関係を疑う気持ちは一切ない。
はじめてryuchellを見た時、「目が大きくて肌がきれいで王子様みたい!」と思いました。同時に、「この人は男の人が恋愛対象かも」という気がして片思いを覚悟してたら、告白もプロポーズもしてもらったんです。だからカミングアウトを受けた今となっては、「私のあの時のカン、あってたやん」って(笑)。それでも、一緒にいた8年間一度も疑ったことがなかったのは、それだけryuchellが私をちゃんと愛してくれたからなんですよね。
だからこそ、ryuchellからカミングアウトされた時は本当に驚いて……これは夢かな? って。あの日から、私の中では「ビフォア/アフター」じゃないですけど、第二の人生なんです。映画とかで、膜みたいなのをバーンと破って向こう側に行くようなシーンがありますけど、あんな気持ちです。それからはryuchellのことを外で話すとき、「息子のパパ」と呼ぶようにして、「旦那さん」や「夫」という単語を一切使わないようにしたんです。そうして意識を変えたら、1、2カ月で自然と事実を受け入れることができていました。人間の適応能力って凄いですね(笑)。
ryuchellは本当に優しいし、周りから求められたことをその通りできちゃう人。それが器用なところであり不器用なところでもあると思うんですけど……。「良き夫」としてメディアに取り上げてもらうことが増えたことで、本当の自分とのギャップに苦しんでいたようです。カミングアウトを受ける数カ月前から突然泣いて謝ってきたりして、理由はわからないけど、このままではryuchellが壊れてしまうと感じたほどでした。
2023.06.08(木)
Text=Natsumi Koizumi
Photographs=Wataru Sato