◆『秘密の森の、その向こう』

 8歳のネリーが森で出逢った少女は、同い年のころの母マリオンだった。祖母、母、娘──ひとときの奇跡が世代を超えた女性たちを結ぶ。

 ネリーは生まれた瞬間からすでに「母」でしかなかったマリオンと出逢い直し、母もまたかつて少女であり娘であり、そしてなによりもひとりの人間であったと知る。やがてネリーは母を「ママ」ではなく「マリオン」と呼ぶようになり、祖母の亡き後深い悲しみに暮れている母にも母だけの固有な感情があることを学び大人になってゆく。

『秘密の森の、その向こう』

U-NEXTで配信中

◆『ロスト・ドーター』

 大学教授のレイダは旅先で若い母親のニーナと出逢う。40代を過ぎたレイダはニーナを通し、若き自分を回顧しはじめる。かつて幼い子どもを残して家を出たレイダは、その期間がどうだったかとニーナに聞かれて答える─「最高だった」。

 やがてレイダは自分には「母性」がないと告白する。この映画はすべての女性に本来的に備わっていると自明視されてきた「母性」の概念を覆す。「母」の姿も過酷な育児の様子も、決して美化されない。

『ロスト・ドーター』

Netflixで独占配信中

2023.09.16(土)
Text=Mizuki Kodama

CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

母って何?

CREA 2023年夏号

母って何?

定価950円

CREAで10年ぶりの「母」特集。女性たちにとって「母になる」ことがもはや当たり前の選択肢ではなくなった日本の社会状況。政府が少子化対策を謳う一方で、なぜ出生数は減る一方なのか? この10年間で女性たちの意識、社会はどう変わったのか? 「母」となった女性、「母」とならなかった女性がいま考えることは? 徹底的に「母」について考えた一冊です。イモトアヤコさん、コムアイさん、pecoさんなど話題の方たちも登場。