この記事の連載
- 星のや竹富島 前篇
- 星のや竹富島 後篇
心地よい南風が吹き抜ける島の伝統家屋を受け継ぐ客室
全48棟の客室は、島の集落と同じくすべて南向きに造られ、琉球赤瓦の屋根の上からは、1棟1棟異なった表情のシーサーが見守ります。
敷地入口正面には、門の代わりに「ヒンプン」と呼ばれる壁を設置。風通しとプライバシー確保が目的ですが、魔除けの意味もあるのだとか。島のしきたりでは、家に入る際はヒンプンの左側を通るので(右側は神様が通るとされる)、客室の入口もまた左側にあります。
家屋は、いわば風の家。幸せを運ぶとされる南風(ぱいかじ)を取り込める大きな窓を南側に配し、家の周りを囲う「グック(石垣)」は、路地を歩く人の頭部がチラチラと見えるくらいの高さになっています。ソトとウチを遮断せず緩やかなつながりを持たせ、他者の存在を感じながら暮らすのが、島の伝統的な集落の醍醐味なのでしょう。
客室のデザインは、開放的な浴室が特徴のモダンな家「ガジョーニ(ガジュマル)」、家族での滞在に適した「ズーキ(デイゴ)」、肌触りの良い琉球畳が敷かれた家「キャンギ(イヌマキ)」、手すりやゆとりある化粧室を備えた「トーナチ(ハスノハギリ)」の4タイプがあり、それぞれの名は島の代表的な樹木から。伝統様式のおもしろさを、そこかしこに感じながら、ひとときの島民となる時間を過ごすことができます。
2022.12.01(木)
文=伊藤由起
撮影=榎本麻美