●どうしたら嫌われないキャラクターに見えるか、を念頭に置いた新作
――そして、最新出演映画『異動辞令は音楽隊!』。自動車警ら隊所属のサックス奏者・北村裕司を演じていますが。まずはサックスに挑んだ苦労話を聞かせてください。
僕、そもそもリズム感がない……というか個性的なこともあり(笑)、楽器との相性が悪いんですよね。サックスはドレミファソラシドの位置から始まって、♯とか♭とか、とにかく覚えることが多いんです。精密機器と言えるぐらいボタンが多すぎる! それを覚えたうえで楽譜を覚えて、その後に楽譜に書いてある運指を覚えて、という流れだったんですが、そこから後は少しずつ楽しくなりました。そして、サックスに愛着がわき、まるで相棒のようになりました。じつは和風な名前も付けていたんですが、それは心の中にしまっています(笑)。
――希望の部署に配属されなかったことの“やさぐれ感”など、役作りに関しては?
この北村裕司というキャラクターをどうしたら好きになってもらうか、ではなく、どうしたら嫌われないキャラクターに見せるか、ということを念頭に置いて演じました。それで、ただツンケンしている面倒臭い奴にならないように、心がけました。一方で、彼がやさぐれている理由や心情も出していければいいなと。
●言うことも、人生経験も、面白い人間になりたい
――音楽隊ではドラムを担当する、主演の阿部寛さんとの初共演はいかがでしたか?
改めて、主演や座長を務める方の力強さを痛感しました。例えば、数年後に僕が阿部さんのような立ち振る舞いができている光景が思い浮かばないんですよね。でも、そこに少しでも近づけるように頑張っていきたいという気持ちが強まりました。そのほか、いろんなことを教えていただき、学ばせていただいた現場だったと思います。
――2年前のインタビューでは、「これからの2年間は計算しながら、激しい感情のお芝居ができるようになりたい」「しっかり筋トレしたい」と言っていました。実際のところ、2年経っていかがですか?
なかなか恥ずかしいことを言っていますが、それに対して答えなきゃいけない恥ずかしさもありますね(笑)。まだまだ拙い部分もあるかもしれませんが、自分の中では楽しんで演技ができているのではないかと思います。筋トレは……あまりしていません!
自分では成長の度合いが分からないのですが、それを踏まえて、2年後は面白い人間になっていたらいいですね。言うことも、人生経験も。ただ、期待はあまりしないでください。
高杉真宙(たかすぎ・まひろ)
1996年7月4日生まれ。福岡県出身。2009年に俳優デビューし、『カルテット』(12)で映画初主演。『ぼんとリンちゃん』(14)でヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。『散歩する侵略者』(17)で第72回 毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞受賞。以降、ドラマや舞台で活躍するほか、現在はバラエティ番組「ぐるぐるナインティナイン」にレギュラー出演中。
『異動辞令は音楽隊!』
高齢者を狙うアポ電強盗事件で、強引な捜査を行い、広報課内の音楽隊への異動を言い渡された、捜査第一課のベテラン刑事・成瀬(阿部寛)。不本意ながらも音楽隊を訪れる彼だったが、そこにいたのはトランペット奏者の来島(清野菜名)やサックス奏者の北村(高杉真宙)ら、どこか覇気のない隊員だった。
2022年8月26日(金)より全国公開
https://gaga.ne.jp/ongakutai/
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2022.08.19(金)
文=くれい響
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=荒木大輔
ヘアメイク=堤 紗也香