存在を広く世に知らしめたのは、ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』の時。演じた役柄の魅力はもちろん、端正な顔立ちと目力の強さ、美しい響きの珍しい名前は、「この子誰?」という好奇心をかき立てられる、抜群の吸引力を放っていた。
それから3年。ドラマ『顔だけ先生』、『17才の帝国』、映画『彼女が好きなものは』、『親密な他人』、『20歳のソウル』などで立て続けに主演を演じ、若手俳優のトップランナーとして圧倒的な存在感を放っている。
新作は「ウルトラジャンプ」で連載されていた人気コミックの映画版『恋は光』。恋をしている女性がキラキラと光って視える特異な体質を持つ大学生を、原作そっくりの四角い眼鏡をかけて熱演した。
「お芝居は楽しいけど、難しい」
そう語る、今最も忙しい23歳に迫った。
今までまったく演じたことのないオタク気質
――『恋は光』は神尾さん演じる西条と幼馴染の北代(西野七瀬)、西条が恋をする東雲(平祐奈)、西条に興味を抱く宿木(馬場ふみか)の4人が、恋の定義について考察する異色の恋愛映画です。物語に触れてみた感想は?
タイトルから抱くイメージとは全然違いましたね。もっとキラキラとした恋愛映画だと思ったけど、会話劇がじっくりと描かれるので、意外でした。
――神尾さんの美しさを封印する、西条の独特な佇まいとメガネが印象的でした。
僕にとっても本当に新鮮でしたし、今までまったく演じたことがないタイプの役でした。最初は正直、不安がめちゃくちゃあったんです。なんかできる気がしなくて……。西条にはオタク気質なところがあるので、そういうキャラクターをどう表現すればいいのかわからなくて。僕自身、アニメが好きだったりするのでオタク気質はあると思いますが、オタク口調みたいになることはないので。
――確かに、抑揚のない早口は独特です。
監督からは「語尾の吐息などで表現することはしないでほしい」と言われました。「セリフはあくまでも淡々と言って、間とかタイミングで感情を表現してほしい」と。これまで経験したことのないチャレンジでしたね。
独特な喋り方が無理にしているように写って“演技してます”っていうふうに見えたら終わりじゃないですか。それだと多分作品の内容なんて入ってこない。本当に「こういう人なんだ」と思ってもらわなければいけないことが、一番難しかったです。
――この役に挑戦して、神尾さんの表現者としての武器が増えたのでは?
今まで演じた中では一番キャラクター性が強い役だったので、ちゃんと成立させられたのは成長だったと思います。監督が「神尾くんが演じたことで、西条がより魅力的になった。説得力が出たと思う」と言ってくださったので、うれしかったです。
2022.06.14(火)
文=松山 梢
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=内藤歩
スタイリスト=杉本学子