生々しい性描写も話題になった『うみべの女の子』で主演を務め、一躍注目を浴びた青木 柚。今後、朝ドラにも出演する彼が、最新出演作についてはもちろん、ジョニー・デップとの共演などを振り返ります。
●映画の現場を経たことで、新たなスタートを
――幼い頃の夢は?
溢れ出るエネルギーをどうにかしたい衝動みたいなものがあって、俳優というよりは、芸能人になりたいという気持ちがありました。ドラマで活躍する同世代の俳優さんを見て、「自分の年齢でも、こういうことができるんだ!」と思い、お芝居を始めました。
――その後、転機となった作品として、2016年に出演された映画『14の夜』を挙げていますが、その理由は?
最初の頃は、特に何も考えず、楽しければいいという気持ちが大きかったと思うんです。高校生になって、この作品の現場に参加したことで、とても濃厚な期間を過ごすことができたんです。いい意味での泥臭さだったり、同世代の俳優からの刺激だったり……。それで、映画が好きになり、積極的に観るようにもなりました。そういう意味もあり、『14の夜』が俳優としてのスタート地点だと思っています。
●男優賞を受賞しても自信がなかった
――続いて、18年公開の『アイスと雨音』に出演。キャスト全員が本人役を演じたこの作品でも、同世代のキャストとの結束力を強く感じたかと思います。
彼らとは、今でも親交があります。現場では田中偉登や森田 想が、しっかり意思を持って、エネルギッシュに勇敢にお芝居している姿を横目で見ながら、刺激を受けていました。2人とも自分と年齢があまり変わらないのですが、僕とは全然違う。「どうしたら、こんな俳優になれるんだろう?」と思っていました。
――そんななか、同年に出演した『暁闇』では、「MOOSIC LAB 2018」において男優賞を受賞されます。
僕はどこか、ふにゃふにゃしているし、クランクアップしたときも、完成した作品を試写で観るときも、常に自信がないんです。いろんな作品のオーディションで選んでいただけることも、『暁闇』で賞をいただいたことも、とても有り難いことなのですが、どこかで「自分の身の丈に合っていない」と思っていました。でも、そこで変な自信がついていたら、「今とは違う場所に行っていたかもしれないな」と思っています。
●原作ファンから高い支持を得た主演作
――そして21年、浅野いにおのコミックを映画化した『うみべの女の子』では主人公・磯辺を演じ、原作ファンから高い支持を受けました。
原作ファンの方から、「磯辺を演じてくれてありがとう」と言っていただけるなど、僕が今まで出演させてもらった映画のなかで、いちばん反響が大きかった作品かもしれません。実写化のプレッシャーを感じていたので、めちゃめちゃ嬉しかったです。磯辺を演じる大変さはありましたが、登場人物の心理描写と重なる性描写が重要な作品でもあるので、そこは丁寧に演じようと心がけました。
――また、今年は水俣病患者の青年シゲル役を演じられた『MINAMATA-ミナマタ-』も公開。初めての海外作品への参加、またジョニー・デップとの共演はいかがでしたか?
撮影は『うみべの女の子』よりも前。高校を卒業する前後に撮影したのですが、現実味がなさすぎました(笑)。オーディションの段階で、ジョニー・デップさんと共演するという話は聞いていたのですが、受かって、気持ちの整理もつかぬまま、ロケ地のセルビアとモンテネグロに飛ぶことになったんです。それで言葉が通じない環境のなか、何とか届けたいという気持ちが強かったこともあり、緊張したり、余計なことを考えることもありませんでした。今、思うとスゴい体験をしたんだなと思いますね。
2021.11.26(金)
文=くれい響
撮影=松本輝一
スタイリスト=小笠原吉恵(CEKAI)
ヘアメイク=内田香織