テロリストがホテルを占拠!! 立ち向かうのは頭悪すぎなポンコツホテルマンたち

◆『ゲームオーバー!』(2018年/Netflix)

 巧みに皮肉が効いたコメディもいいですが、“ちゃんとしたもの”ばかり摂取するのも健全とは言い難く、時にはジャンクフード的な笑いがほしい…。そんな方にもってこいなのが、この作品です。

 本作の主演は、傑作ミュージカルコメディとしても名高い『ピッチ・パーフェクト』シリーズや、名優ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイの共演で話題になった2015年の『マイ・インターン』などにも出演していたコメディ俳優アダム・ディバインです。コメディアン出身の彼は、共演のアンダース・ホームやブレイク・アンダーソンらとともに本作の製作にもクレジットされており、これまでに培ってきた笑いのエッセンスを遺憾無く発揮しています。

 高級ホテルの清掃員であるアレックス、ダレン、ジュエルは腐れ縁の三人組。金儲けに目がないアレックスと、アイディアマンのダレン、そしてそれを形にする才能の持ち主であるジュエル。そんな一攫千金を夢見るトリオが働くホテルに、ある日、超大金持ちのラッパー、ザ・ベイが宿泊し、飲めや歌えのパーティーが開かれることに。

 これはチャンスと、ザ・ベイにアイディアを売り込もうと息巻いていた三人ですが、突如として武装テロリスト集団が襲撃。封鎖されたホテルで唯一拘束を免れたのは、幸か不幸かアレックスたち三人だけで……。というのがあらすじです。

 一言で言うと、本作は、1989年に公開されアクション映画の新たなロールモデルとなった傑作『ダイ・ハード』のパロディ映画です。閉ざされた空間で知恵と勇気を駆使して孤軍奮闘する『ダイ・ハード』に対し、本作は冬でも短パンを履いていそうな小学生ぐらいしか共感できなさそうな、超お下品な下ネタでテロリストたちを困惑させる、という爆笑展開になっています。

 また、バカな男性たちがアホな会話を怒涛の勢いで繰り返すその感じは、日本でもスマッシュヒットとなった2010年のコメディ映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』も彷彿とさせます。

 本作のギャグは兎にも角にも下ネタとポップなグロ! その振り切りぶりは清々しいほど。特に男性の下半身ネタの濃度は凄まじく、主役のアダム・ディバインはなんと無修正で下半身を晒しまくっています。そのため、下ネタが笑えない人は正直ドン引きするかもしれませんが、このしょーもなさにお茶を噴き出してしまう小学生・中学生マインドがある人なら、きっと腹の皮がよじれるくらい大笑いできるはず。

 一方で、頭の悪い映画かというとそうではなく、よく観るとむしろすごく頭の切れる人たちが作っていることがわかります。閉鎖空間アクションとしての物語の縦軸がしっかりしているので話がブレていませんし、映画好きをくすぐるポップカルチャーネタが随所に散りばめられています。

 また、しょーもなさを共有する“友達”のありがたさをフッと感じさせてくれる感動描写もあり、一粒で二度三度おいしい、作品としての奥行きもあるんです。例えるなら強烈な香りのチーズスナックのような映画で、心の暴食をしたくなった気分の際は最高の相性を見せてくれるでしょう!

◎あらすじ

『ゲームオーバー!』(2018年/Netflix)

アレックス、ダレン、ジュエルの三人は、高級ホテルで働く清掃員。日々一攫千金の夢を見続ける彼らの前に、ある日チャンスが訪れる。それは大富豪のラッパー、ザ・ベイの宿泊。パーティーのどさくさに紛れて自分たちのアイディアを売り込もうと画策する三人だったが、不運にも突如襲撃してきた武装テロリスト集団とのバトルに巻き込まれてしまい……。

2021.08.12(木)
文=TND幽介(A4studio)