本当はこんなはずじゃなかったのに、人を本当に好きになるってことがわからない、幸せって何だっけ? みんなはいったいどうしているんだろう。
そんな月並みだけどつきまとっては離れない悩みごとでちょっと疲れているあなたに6冊の漫画を贈ります。この6冊の漫画の登場人物たちは人生にがっぷり四つで向き合う等身大の人たち。そんな彼らの姿を見れば、ほんわか&ホンワカ(ホント、ワカル!)すること間違いなしです。
今こそ読むべき“ホンワカ”漫画6選をご紹介。
①『三拍子の娘』
ヨハン・シュトラウスの「人生を楽しめ」のリズムに合わせ軽やかに人生を踊る三姉妹。ある日突然、父に捨てられた三姉妹ですが、描かれる三人は実に前向き、その生活は魅力的です。
苦労の星のもとに生まれながら、奇跡的に楽天家に育った長女すみ(28歳)と、めんどくさがりの自堕落ギャルで、愛嬌で全てねじ伏せてきた次女のとら(22歳)、秀才で美少女の無気力ガール、三女ふじ(18歳)。彼女たちの日常はとっても楽しく、愛らしい。
一見、普通の日々の生活を描いている漫画のように見えますが、実はそこは夢の国。ワンダーランドよりワンダフルな世界です。悲しいことがあっても、三人でワルツのリズムを刻めば、きっと明るい未来が待っている。それを体現するかのような描写でいっぱいです。
楽しそうな姿を見れば自然とこちらも楽しくなるでしょう? そんな気分にさせてくれる漫画です。
『三拍子の娘』
町田メロメ 著
DU BOOKS
②『しあわせは食べて寝て待て』
主人公の女性は膠原病と呼ばれる病気に罹り、これまで通りの生活を送ることができなくなってしまった麦巻さとこ。キャリアウーマンを志向していた彼女は病気で思い通りにならない自分と、世間との交流の中でこれ以上ないくらい落ち込んだ日々を過ごしています。
そんな中、物件を探している時に見つけた小さな団地。その団地での人との出会いの中で、これまでとは違うしあわせの形を見つけていきます。緩やかな互助というか、人と人の思いやりの分に支えられ、ちょっとずつ前向きになっていくのです。
社会の荒波の中で他人の振る舞いを見て、自分はこんなんじゃダメなんじゃないか、と何か気後れしてしまうことってありますよね。過去の自分や他の人と比べて自分が苦しむのってバカバカしいけど陥ってしまいがち。そんな時、悲観的にならずのんびり、自分の範囲の楽しさをちゃんと噛みしめることができれば、きっとそれは自分にとってしあわせ。
悩んでは前を向き、前を向いては悩み、それでも進んでいく人生、そんな様子が丁寧に描かれています。
『しあわせは食べて寝て待て』
水凪トリ 著
秋田書店
③『あなたはブンちゃんの恋』
宮崎夏次系はやっぱりずるい!
恋に狂うことをこれほどまでに描写した漫画がかつてあったでしょうか。一読しただけでは「なぜそうなる⁉」という怒涛の展開にあっけにとられてしまいますが、一度深呼吸して読むと、胸が詰まりそうになります。
思わず「これは私のことを描いているのではないか?」と思ってしまいました。片想いに苦しみ、正解の道に踏み出すことができず、アクセル全開で不正解の道へ突き進む。恋をしたことがあるなら誰だってその経験があるはずです。
そして作中で末廣さんが話す「あなた自分がかわいいだけだ、相手のことなんてないんだ」というセリフ。そう、まさにそうなのです。恋は他者への恋でありながら、自分を好きになることなのです。もしやこれは新しい恋の物語でありながら、アイデンティティ確立の物語か……。
主人公のブンちゃんに平穏の日々が訪れることを願うばかりです。
『あなたはブンちゃんの恋』
宮崎夏次系 著
モーニングKC
2022.02.12(土)
文=CREA編集部
写真=今井知佑