日差し照りつける夏になってもステイホームを余儀なくされ、外に飛び出したくてウズウズしている人もいることでしょう。そんな人にオススメなのが、NetflixやAmazon Prime Video(以下、Prime Video)といった動画配信サービスで観られる“夏映画”です!
ひと夏の恋から、スカッと爽快な大バトル、そして思わずゾッする恐怖体験まで、夏映画には室内でも見られる無数の夢が広がっています。そんな作品群から、今回は筆者イチオシの“動画配信サービスで観られる傑作夏映画”5作をご紹介。まだまだ夏は終わってないですよ!
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舞台は潮風と異文化感じるハワイ! 家族で観られるアドベンチャー映画入門編
◆『オハナ』(2021年/Netflix)
『オハナ』は、この夏、お家時間に小さなお子さんと過ごす機会が増えた人にぜひオススメしたい作品です。本作は「ジュブナイル・アドベンチャー」のジャンルに属する作品。
この「ジュブナイル」とは少年期を指す修飾詞で、海外では小学生から中学生前半くらいの年代の子供たちを主人公にしたフィクション作品を「ジュブナイル・●●」と呼ぶことが多いのです(日本では単に「ジュブナイルもの」と呼ばれることが多い)。映画で挙げるなら、2021年の6月11日に、日本テレビ系『金曜ロードショー』で26年ぶりのゴールデン放送となった名作アドベンチャー映画『グーニーズ』がその好例でしょう。
Netflixが制作を手がけたオリジナル映画である『オハナ』。メガホンを取ったのは、長編映画は本作が初という台湾出身の女性監督ジュード・ウェン。そして、彼女とタッグを組んだのは『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、『プライベート・ライアン』などの大作に参加してきたプロデューサーのイアン・ブライスです。
新進気鋭の若手監督と、往年の名作を手がけたベテランプロデューサーが組んだことで、懐かしさを感じるのに口当たりはフレッシュという絶妙な塩梅に仕上がっています。
そのストーリーは、ハワイにルーツを持つニューヨーカーの少女・ピリと、その兄イオアネ、そして母のレイラニが、ハワイのオアフ島に暮らす祖父・キモの元に訪れたことから始まります。
そこでピリは祖父が持っていた手帳から、大昔にいたという航海士・モンクスの隠された財宝伝説を知り、島で出会った赤毛の少年・キャスパーや、地元の日系人の高校生・ハナ、そして兄とともに危険な宝探しに飛び込んでいくのでした。
この作品は、お話のプロットや登場キャラクター、さらに洞窟の奥に眠る財宝やそれを阻むトラップの数々など、先述の名作『グーニーズ』を意識した演出が随所に見受けられます。実は『グーニーズ』とのつながりはそれだけではなく、同作で名キャラクター・データ役を好演し、近年は裏方に回っていたアジア系俳優のジョナサン・キー・クァンが実に十数年ぶりに本作で映画出演をしていることからも、そのリスペクトぶりが伺えます。
主人公の母の学友役というカメオ出演ですが、「ジュブナイル・アドベンチャー魂」を次世代にバトンタッチするような意気込みが感じられるサプライズ出演です!
古びた書物に記されたお宝への手がかり、子どもたちが身近な日用品で進める冒険の準備、文句を言いつつも面倒を見てくれる兄貴キャラなど、こういう映画の“あるある”をきっちり今の世代に伝えようとする姿勢にも好感が持てる本作。
一歩間違うと古臭く感じてしまうこうした演出も、今の小学生世代が持つ大人びた視点や、最新のポップカルチャーネタを取り入れることでスムーズに語っているのが上手いです。
そして、本作は娯楽アドベンチャーでありつつも、ハワイ語で「家族」を意味する「オハナ」というタイトルからもわかるとおり、作品の根底には“自分の出自に誇りを持つ大切さ”といったメッセージ性を随所に感じます。
主人公のピリはハワイの血が流れていながらも、自然を愛し伝統を重んじる精神に初めは拒否反応を示し、兄のイオアネは自分の出自を隠すかのように「イー」という愛称を名乗ります。しかし、そんな都会っ子たちも大自然あふれるハワイでの夏の大冒険を経て、地元に誇りを見出していきます。
ラストはド派手な展開ではなく、地に足がついたものなのですが、それゆえに一緒に観た家族との絆がより深まるかもしれません。
◎あらすじ
『オハナ』(2021年/Netflix)
ニューヨークはブルックリンに住むハワイ系のシングルマザー・レイラニとその子どもである兄のイオアネと妹のピリ。一家は、ハワイのオアフ島に住む祖父・キモの元に一夏の帰省をすることに。慣れない環境に戸惑うピリは、偶然にも祖父の部屋からオアフ島に眠る伝説の財宝の手がかりが記された手帳を見つけるが、それは胸踊る大冒険の始まりだった……。
2021.08.21(土)
文=TND幽介(A4studio)