全世界で新型コロナウイルスが猛威をふるい、ネットやテレビのニュースから流れてくるのは不満・怒り・不安を煽るものばかり。ステイホームの習慣によって自宅で過ごす時間とともにメディアに触れる機会も自然と増え、そうした負の情報の多さにうんざりすることも……。
そんな気分の時にオススメしたいのが、NetflixやAmazon Prime Video(以下、Prime Video)といった動画配信サービスで観られる、抱腹絶倒の“海外コメディ映画”です! ぶっ飛んだ設定やキッチュなギャグの合間に、ハッとする社会批判や問題提起を巧みに練りこんだ傑作コメディから、今回は筆者オススメの作品を5作紹介します。
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悪に支配された社会を救うのはアラフィフのパワフルおばちゃんヒーローコンビ!!
◆『サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~』(2021年/Netflix)
今や、ハリウッド業界は空前のスーパーヒーロー映画の時代と言っても過言ではありません。マーベル映画やDC映画など、スーパーヒーロー映画の一大ブランドが次々と世に大作を送り出している中で、コメディ映画業界もこうしたモチーフをうまく活用した愉快な一作を生み出しました。それが『サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~』です。
主演の一人であるリディア役を演じる女優メリッサ・マッカーシーは、1220万人の視聴者数を記録した2011年のコメディドラマ『マイク&モリー マシュマロ系しあわせ日記』でエミー賞主演女優賞を受賞したこともある、スタンダップコメディアン出身の実力派。
2016年のリメイク版『ゴースト・バスターズ』では主演を務めるなど、現在はハリウッドで大ブレイク中です。そんな彼女とコンビを組むのは、2011年の『ヘルプ 心がつなぐストーリー』でアカデミー助演女優賞を受賞し、その後もアカデミー賞の常連となった演技派のオクタヴィア・スペンサー。
本作の物語の舞台は、突如地球に降り注いだ謎の宇宙線の影響で、人類のうちごくわずかな“社会病質(ソシオパス)的な人間”だけが様々な超能力を発揮できるようになってしまった世界。超能力を持った彼らは“ミスクリアン”と呼ばれ、各地で好き放題に暴れまわります。
そんな折、幼少期から天才的な頭脳を持っていた女性・エミリーは、悲願だった人工的に超能力を与える薬の開発に成功。ですが、それを偶然にも投与してしまった相手は、若い頃にエミリーとケンカ別れした正義感の強いお調子者の女性・リディアで……。というのがあらすじ。
本作は、格好良く・美しいフォルムで縦横無尽に画面を駆ける近年のスーパーヒーロー映画をある種皮肉っています。というのも、主人公のリディアとエミリーは、どちらもかなり恰幅の良いアラフィフのおばちゃんコンビ。しかも、天才的頭脳で大企業を立ち上げたエミリーはともかく、おしゃべりかつ直情的なリディアは、薄給で働く港湾労働者。
そんな、一見するとスーパーヒーロー映画とは縁遠い印象を持つキャラクターが、自分の運命に四苦八苦するさまをコミカルに描き出しています。
必見なのは、超能力を訓練するために1ヶ月以上に及ぶ猛特訓を受けるシーン。コロッとした体格のリディアが跳び箱に引っかかって「ぐわー!」っと盛大にひっくり返ったり、80kgの鉄球を「おりゃー!」とぶん投げてエミリーの会社のロゴをぶっ壊したりと大暴れするさまは爆笑です。
同時に、はちゃめちゃな状況に飲み込まれても「まあ、なんとかなるっしょ!」とポジティブに捉え直してしまうリディアの七転び八起き精神は、不思議と観る者を勇気付けてくれますし、これこそヒーローたる者の資格とも言えるでしょう! 愛嬌たっぷりながら、ちゃんと“ヒーローしている”キャラクターの存在が痛快なんです。
この作品は、スーパーヒーローの矜持と爆笑展開を描いた映画であると同時に、すれ違ってしまった親友同士の再生の物語でもあります。行き当たりばったりのリディアと、クールかつスマートなエミリー。成り行きでコンビを組むことになった二人が危機を乗り越えていくなかで、互いに自分に足りないものを埋め、必要不可欠な相手として友情を再構築していくさまは、視聴者の心を温めてくれるはずです。
◎あらすじ
『サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~』(2021年/Netflix)
謎の宇宙線が社会病質(ソシオパス)の傾向を持つ者たちに強力な超能力を与えてしまった世界。悪の超人たちに蹂躙される市民であった港湾労働者のリディアは、ハイスクール時代に喧嘩別れした天才科学者のエミリーの元を訪ねた際に、彼女が開発していた超人化薬を偶然摂取し、怪力無双な能力を手に入れてしまう。開発済みの透明化薬と合わせて自分が無敵のヒーローになる予定だったエミリーは、仕方なく能力の片割れを得てしまったリディアとともに、ヒーローチーム“サンダーフォース”を結成するのだった。
2021.08.12(木)
文=TND幽介(A4studio)