世界中に存在する串に刺さったおいしいもの。箸もフォークも使わずに口に運べる串ものは、なぜか食欲を搔き立てられます。

 焼きたてを豪快に、串ごと口に運ぶ醍醐味を味わってみてはいかが?


伊勢廣「焼鳥フルコース」

●推薦人:渡辺P紀子さん

 1羽丸ごと鶏を楽しむ。ローストチキンで⁉ いえいえ、日本には焼鳥という美しい伝統がございます。

 ささみにもも肉、葱巻に団子、手羽に砂肝、肝、合鴨に皮身の9本の串と特製鶏スープなど全12品で味わい尽くす。

 そもそも、この焼鳥のコース仕立ては、大正10(1921)年、鶏肉の小売店として創業した伊勢廣が、当時まだ珍しかった焼鳥専門店を併設した際に、初代が考え出したもの。以来100年、変わらぬスタイルを貫いてきた。

 鶏肉は氏より育ちをモットーに、銘柄にこだわらず、飼育方法、日数など適切に育てられたメスをマルのまま仕入れ、毎朝、ベテランの職人がさばいて串打ちをしている。

 うなぎではないけれど、焼鳥も「串打ち3年、焼き一生」などといわれる。仕込みには2人、姥目樫備長炭を積んだ焼き台に立つ職人には1人、勤続45年以上の人がいるとか。任せて安心の布陣である。

 この10月、建物の老朽化にともない、新築移転を果たしたが、串打ち&焼きが外から見えるよう、1階をガラス張りにし、食欲をそそる仕掛けにした。視覚もさることながら、匂いの誘惑には抗いがたく、つい寄り道してしまいそうである。

 遠赤外線で包み込むように焼かれたささみはふわっと品よく、ももは、嚙みしめるたびに旨みがにじみ出てくる。団子はつなぎを使わず、鶏本来の味が楽しめるし、レバーはふっくら。

 一本一本、変化に富み、コースならではの醍醐味を堪能できる。

伊勢廣 京橋本店

所在地 東京都中央区京橋1-4-9
電話番号 03-3281-5864
営業時間 11:30〜13:40(L.O.)、16:30〜20:30(L.O.)、土曜 〜20:00(L.0.)
価格 ランチ 1,600円〜、ディナー 8,000円〜
定休日 日曜・祝日
カード 利用可
席数 80席
おすすめの人数 ひとりで大丈夫
※ランチは焼鳥5本定食 1,900円、お昼のコース 3,950円ほか、ディナーは7本コース(10品) 4,950円(すべて税込)など。

2021.01.07(木)
Text=Michiko P Watanabe
Photographs=Wataru Sato

CREA 2021年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

贈りものバイブル

CREA 2021年1月号

特別な一年に想いを伝える
贈りものバイブル

特別定価900円

思いもかけない日々となった2020年。いつもと違う毎日のなかで新しい習慣ともなんとか付き合ったり、戸惑うこともあったと思います。思い通りに会えない日々が続いても、贈りものという形で気持ちを届けたい――。誰もが頑張った一年と、新しい明日に贈る、感謝とご褒美、ときどきエール。いろいろな想いをギフトにして届けます。