ジュリーの余韻が平成のロマンス声・河村隆一へ飛び火

 ときとして甘い余韻は、思わぬ副作用を起こす。ジュリーのコンサートから帰ってきた私は、なぜか芋ずる式に河村隆一の名盤中の名盤「Love」を猛烈に聴きたくなり、タンスの奥から引っ張り出してしまった。

 なぜ河村隆一が思い出の小箱からジャンピングフラッシュしてきたのか。ジュリーのフェイク「ハァーン♪」の色っぽさが彼のそれと共通していたからではないか、と勝手に自己分析している。

 名曲「Glass」で愛をシャウトするサビ「君の夢は」という歌詞を「君の夢ふぉハー!」と歌うのは、もはや伝説。宇多田ヒカルの「First Love」にある歌詞「誰を思ってるだろう」を「誰を思ってだハー♪」歌唱と並んで、「語尾をハにするとセクシー五倍増し説」の2大根拠となっている。

 MVも見たが、河村隆一は歌唱中顔面の崩れを全く気にしない。これもいい。最初こそ「顎大丈夫?」とヒヤヒヤするが、次第にその崩れた表情が「なりふり構っている時点で恋は負け」という、甘酸っぱくも厳しい恋愛哲学を教えてくれる。そして最終的には「ああん、RYUICHI、セクシーユー!」と心溶かされてしまうのだ。

 ジュリーRYUICHIジュリーRYUICHIとかわりばんてんに聴いているうち、マイハートがすっかりピンクに染まってきた。

 バレンタインは見送ってしまったが、ホワイトデーはこの2人の楽曲に浸り、一人ワイングラスを傾け、マシュマロを袋食いしようと思う。ううむ、単なるヤバい女だ!

 みなさんのロマンス声は誰だろうか。音楽は愛でいっぱいだ。

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2020.03.14(土)
文=田中 稲