長年、紅白を愛してきたからこそ、物申したい!

 1月ももうすぐ終わり。紅白を語るには少々時が経ち過ぎているが、思い出とは発酵食品のようなもの。脳内で熟した感想をグイグイ語りたくなるのが人の常である。

 ということで、令和初の紅白歌合戦。新時代の初の紅白だ、寿げ寿げと、カニを購入し張り切って見た。

 が、なぜか私が張り切っている年ほど、盛り上がらない紅白。人生って永遠に片思いの連続である……。

 長年紅白歌合戦を心から愛してきたからこそ言おう。ついに年末のリアル視聴枠「年忘れにっぽんの歌」に切り替える時期が来たかもしれない。

 2018年のような祭り感は無く、代わりに襲い来る戸惑い。特に今ドエライ問題作を見ているのではないかと思わされたAI美空ひばり!

 私の意見は丸ごと中村メイコさんと同じである。紅白でまさか手塚治虫SFばりのディストピア感を味わおうとは。

 いやいや、ちょっと落ち着けマイハート。2018年の米津玄師に引き続き、今回も素晴らしい発見がたくさんあったではないか。

 ちょっと不思議な加工の人としか思っていなかったMattの気品。嵐の歌のうまさ。そして予習なしで視聴したKing GnuとOfficial髭男dismのスタイリッシュ・ボイス!

 これらは、2019年紅白を見なければ、気づかないまま人生終わっていたかもしれない。そりゃとんでもない話だ!

 ということで、今回も文藝春秋取材班によるリハーサル写真が充実しているので、それをメインに愛でつつ、ほんの一部ながら見どころを振り返ろう。込み入った感想はそれからでも遅くはない。さあ、時を戻そう!

コラボづくしの前半戦は 演歌陣の包容力を尊敬

■Foorin「パプリカ~紅白スペシャルバージョン~」

 幼いメンバーが大物出演陣にガンガン絡んでいく姿に感心。私があの年頃のときは、洟を垂らし母のスカートで拭いていた……。

 後ろできらびやかな衣装をまとった椎名林檎がものすごく真剣にパプリカダンスをしているのが萌えポイント。

■郷ひろみ「2億4千万の瞳―エキゾチック“GO! GO!”ジャパン―」

 NHKホールの廊下を走り、スポーツ選手そっくりさんを引き連れ「ヒアウィゴー!」「ワンモアターイム!」「ジャペアオオオン!」とひたすら叫ぶ郷ひろみ以上に元気な64歳を私は知らない。彼の体力気力はシニアの希望。

■島津亜矢「糸」

 人気ピアニスト、清塚信也とのコラボ。島津亜矢の歌唱に合わせ、「ううん」「おおぅ」と陶酔の表情で奏でる清塚氏の全身芸術家なピアノに圧倒。引き終わった後の手の挙げ方までマーベラス。

■おしりたんてい「ププッとフムッとかいけつダンス」

 チビッ子は本当におしりとかうんことか好きだ。しかしこの歌を誰より笑顔で生き生きと踊っていたのは郷ひろみ。彼は本当にシニアの希望。

■天童よしみ「大阪恋時雨」

 Mattがピアノで応援。2018年武田真治に続き異業種格闘的になるのかと思ったが、いやいや心洗われる名コラボ! 2人のアイコンタクト、一緒に口ずさむシーンは微笑ましく、音楽を愛する者同士の素晴らしいパフォーマンスであった。

 子ども時代、天童と「のど自慢大会」で優勝を競うライバルだった上沼恵美子がアップで抜かれ、その北島マヤ&姫川亜弓感に萌えた。

■山内惠介「唇スカーレット」

 山内惠介のお面をつけたアクロバット軍団が大量に湧いて出る! 巨大な惠介人形が目からレーザービームを出す! それに動じず天才バイオリニスト、木嶋真優が狂気のメロディを奏でる! 気配り王子山内惠介の振り切った自己主張レボリューションに大感動。

■三浦大知「Blizzard」

 引力に抗える男として有名。この人が本気を出せばアッサリ数時間レベルの空中浮遊を成功させそうな気すらしている。エネルギーが爆発するような超絶歌唱とパフォーマンスを見て私は確信した。彼は地球人ではないと!

■坂本冬美「祝い酒~祝! 令和バージョン~」

 最初の和太鼓で「いよーっ!」と掛け声をかけたイケメンに突然フォーリンラブ。調べたところKing & Princeの岸優太様というお方であった。

 紅白はこういったラブアクシデントがあるから気が抜けない。言わずもがな冬美様の歌唱はパーフェクト!

2020.01.22(水)
文=田中 稲
撮影=文藝春秋