解放の女神MISIA、そして“紅白”歌合戦が終わる日
いろいろ見どころはあったが、なんといっても2019年紅白の主役はMISIA。「IN TO THE LIGHT」のハイトーンボイスでは、寝ていた家族数人が一斉に飛び起きた。
レインボーの旗をかざし、ドラァグクイーンたちが華麗に踊るステージはもはや映画のワンシーン!
「歌で世界を解放する女神」といった風情のMISIAを中心とした大迫力のパフォーマンスに口が開いたまま。「AI美空ひばり」でどよどよしていた心がドッカーンと希望的に上がった。
突然異世界の楽園に飛ばされ、そこを仕切る王様に特別な接待を受けている錯覚に陥ったほどである。
そして、もう「紅白」歌合戦という括りをやめるべき時期に来たのかもしれない。MISIAが掲げるレインボーカラーを見てそう思った。
以前から「そろそろ『紅 vs 白』じゃなくて、『若手 vs ベテラン』にしたほうがいい」という説を唱えている人が何人もいたが、来たのか、その時期が!
さらに今回メドレーが多かったことで、逆に歌への飢餓感が増した。メドレーは確かにオイシイ部分だけいくつも聞けてお得感はあるのだが、やっぱりステキな歌は一曲丸々世界観に浸りたい。もっと歌を! フルコーラスを頂戴!! 出場歌手も、もはや正規とフライング組と特別枠とミックスベジタブル状態である。
ジャニーズJr.は、本当に初出場のとき感動が薄れやしないか。
もう気持ちが追いつかないわ。さらば紅白。また逢う日まで、逢える時まで……。
とかいいながら、今年の年末も、新聞の曲順一覧を見てウキウキしてるかもしれない。毎年そうだ。紅白は、別れるといいながら長年ズルズル続いている彼氏的な!?
嗚呼、私は2020年末、どの番組を見るためにカニを買うのか……。
Column
田中稲の勝手に再ブーム
80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。
2020.01.22(水)
文=田中 稲
撮影=文藝春秋