じつは演出家の
指名だった“番長”

――ちなみに、板橋さんにとって、転機となった出来事や作品は?

 大学の後輩だった三浦直之が主宰する「劇団ロロ」に出会ったこと。高校の柔道部で知り合った奥田庸介が監督した映画に出たことも大きかったと思います。それと、作品でいえば、オーディションではなく、直接声を掛けていただいて、門倉努役を演じたNHK連続テレビ小説「なつぞら」ですね。

 演出家の田中正さんは「劇団ロロ」の舞台を観に来てくださって、よくお酒を飲むような関係だったんです。それで2018年にお会いしたときに「板橋くん、役があるから、スケジュール空けといて」と言われました。昭和の番長のイメージが僕にピッタリだったようです。

――番長役で状況が一転したわけですが、これまで俳優を辞めようと思ったことは?

 35歳という年齢だし、こんなにいい台本って、一生に何度も出会わないと思いました。番長役でちょっとでも跳ねなかったら、役者を辞めて、実家に帰るなり、別の仕事に就くことも考えていました。如実に俺に才能がないことを突き付けられるわけですし。役者って、正直なところ、辞めるきっかけがない仕事ですからね。

2019.11.22(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=山崎惠子