江戸っ子好みのキッチュな塗りの技法を開発

雛図(部分)  柴田是真作  江戸~明治時代  19世紀  根津美術館蔵 [前期展示]
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 さらに是真は、機知に富んだ江戸っ子好みのさまざまな変塗まで開発・復興している。もとはこれも刀の鞘の塗りに用いられた技術であり、漆にさまざまな顔料や副材料を混ぜることで、あたかも漆以外の素材を使ってあるかのように見せる。高級な輸入木材の「紫檀」や、金属の「青銅」と見紛う塗りの技法は、時にキッチュにも感じるが、そこが面白いじゃないか、と江戸っ子に膝を叩かせた是真の面目でもある。さらに漆で紙に絵を描く「漆絵」も含め、絵画/工芸の枠組を超えた是真の活動は大きな人気を博し、万国博覧会にも出品。そして世界に「ZESHIN」の名が轟くようになったのだ。

漆絵画帖 波汐汲図 柴田是真作  江戸~明治時代  19世紀  個人蔵 [前期展示]

 近年は、こうした海外で蒐集されたコレクションが紹介されることが多かったが、今展は約30年ぶりに、国内の優れた是真作品約140点が勢揃い。長く秘されて人目に触れずに来た作品も多く、是真の真価を問う決定版の展覧会となりそうだ。

特別展 ZESHIN ―柴田是真の漆工・漆絵・絵画
会場 根津美術館
会期 2012年11月1日~12月16日
休館日 月曜日
開館時間 10:00~17:00
料金 一般1200円
問い合わせ先 03-3400-2536
URL www.nezu-muse.or.jp

Column

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2012.11.24(土)