筆者だけかも知れないが、中国の古代文明というと、「悠久の」とか「4000年の歴史」というお決まりのフレーズで止まってしまい、具体的なイメージを持ちにくかった。フィクションも含め、中国の歴史で馴染みのあるのはせいぜい「三国志」以降。何しろ広い。歴史も長い。いつ、どこで、何が起こって来たのか、あまりにも茫漠としすぎて、把握しようがないではないか。
今回の「中国 王朝の至宝」展はそんな「中国音痴」にはうってつけ。文明の源流となった夏や殷にはじまって、史上初めて全土を統一した秦、領域的にも歴史的にもより広大な範囲を支配した漢、四分五裂の時代を経て再統一成った隋、唐、そして宋まで、紀元前2500年頃から1200年代まで、まさに4000年近く、入れ替わり立ち替わり現れる王朝の興亡と文化を一気に見尽くせるタイムトラベル、とでも呼びたい内容だ。
中国では長い間、黄河流域が文明の揺籃の地と考えられてきたが、近年の発掘調査などの結果から、長江流域、また内モンゴル東部から遼寧西部にかけての遼河流域など、複数の文化圏があったことがわかってきている。こうした古代文明の中から抜きん出て来たのが、現在の河南省平原部を中心とする古代中国の心臓部、いわゆる「中原」に、紀元前2000年頃に興った夏王朝だとされる(その後の殷、春秋・戦国時代の周、後漢、三国時代の魏、西晋、北魏、北宋など、歴代王朝の都が置かれた場所がもっとも多いのがこの河南省=中原であった)。
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2012.10.27(土)