8月29日、ヴェネチアで第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展が開幕した。建築の国際展としては世界最大規模で、2年に1度開催される。場所はヴェネチア・ビエンナーレ美術展(現代アートの国際展で、建築展と交互に開催)と同じで、各国のパビリオンがあるジャルデーニと古い造船所のスペースを利用したアルセナーレのふたつがメイン会場となっている。

 ビエンナーレの柱はふたつある。ひとつは今回の総合ディレクターであるイギリス人建築家のデイヴィッド・チッパーフィールドが「コモン・グラウンド」というテーマで企画したグループ展だ。「コモン・グラウンド」とは「共通の基盤」という意味。建築展らしく、斬新なデザインの模型やインスタレーションがあるいっぽうで、建築を支える「共通の基盤」としての社会や歴史に目を向けたプロジェクトも多い。

アルセナーレでのアーバン・シンクタンクの展示

 ちなみに「コモン・グラウンド」部門の金獅子賞(最優秀作品賞)を受賞したのは、世界各国でスラムの住環境改善などに取り組んでいるアーバン・シンクタンク。今回の企画は、アルセナーレの会場内に簡素でカラフルな中南米テイストのカフェを作り、そこに写真家のイワン・バーンがベネズエラのカラカスのスラムで撮影した写真を展示するという内容。このスラムは建設途中で放棄された45階建てのビルを貧しい人々が占拠して生まれたものだ。

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2012.10.01(月)