世界で注目される日本の現代建築家を感じる

 そしてビエンナーレのもうひとつの柱は参加国がコミッショナー(展覧会の企画者)を立て、独自に展示を行う国別展示だ。今回の日本館は建築家の伊東豊雄がコミッショナーを務め、乾久美子、藤本壮介、平田晃久の若手建築家3人に写真家の畠山直哉を加えた4人による展示を行った。

画像提供:国際交流基金
写真:畠山直哉
(C) Japan Foundation photo:Naoya Hatakeyama

 テーマは「ここに、建築は、可能か」。東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田市に若手3人と伊東が地元の人々と協力してつくる「みんなの家」(地域住民のための集会所)の設計プロセスを紹介する内容で、国別展示部門の金獅子賞を受賞した。展示室の四方の壁には陸前高田出身の畠山が撮影した、津波ですべてを失った街のパノラマ写真。そして室内には陸前高田から運んだ木の柱が林立し、そのあいだに設計途中で作られたいくつもの模型が置かれた。

平田晃久「Tangling」展の会場イメージ

 被災地の過去と現在、そして未来への希望が交錯し、見る人の感情にまで訴えるような力強いインスタレーションになっている。なお今回の日本館での展示に参加した平田晃久はロンドンのアーキテクチャー・ファンデーションで個展を開催中だ。建築と社会の関係について考えてみたり、世界で注目される日本の現代建築家の考え方に触れるなど、建築展は今までとは違った目で建築や都市を楽しむ機会を与えてくれるはずだ。

ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
開催期間 2012年8月29日~11月25日
開催場所 ジャルディーニ、アルセナーレ、およびヴェネチア市内各所
URL www.labiennale.org/en/architecture/news/29-08.html

平田晃久「Tangling」展
開催期間 2012年9月16日~11月17日
開催場所 アーキテクチャー・ファンデーション(ロンドン)
URL www.architecturefoundation.org.uk/programme/2012/akihisa-hirata-tangling

Column

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2012.10.01(月)