クリスマス、年末年始とイベントが続く今日この頃、六本木を行き来するカップルの数も心なしか増えているような気がする。そうやって仲良く六本木ヒルズの展望台へ上がり、「夜景きれーい」などとひとしきり盛り上がった後で、「森美術館で現代美術の展覧会でも観て行こうか」と、何も知らぬまま踏み込んだりすると、タイヘンなことになる。現在この美術館では「会田誠展:天才でごめんなさい」が、開催されているからだ。
巨大化したフジ隊員がキングギドラに陵辱される大画面セル画を描いたかと思えば、空爆によって炎上するNYを屏風仕立てにし、未来の日本で食糧難から開発された、という設定の「食用人造少女・美味ちゃん」の「料理」を並べ、かと思えば無数の女性の裸体がジューサーにかけられている『ジューサーミキサー』、死屍累々とサラリーマンが積まれて山水画のように見える『灰色の山』などの大作絵画を次々と描き、またある時は、国際指名手配のテロリストに扮したビデオ作品を撮影する。会田は混沌とした日本社会の状況や文化の多層性を反映した、毒を孕む挑発的なテーマの作品を次々と発表してきた現代美術作家。デビュー以来20年以上にわたる作品を一堂に集めると共に、日本未公開作3点、最新作8点を加えた約100点の作品で、この多義的な作家の全体像を俯瞰しようというのが、今回の展覧会だ。
多彩(すぎる)作品が展示された会場での見どころ(?)のひとつは、性的に過激なモチーフの作品ばかりを集めた通称「18禁部屋」だ。公立の美術館では堂々と展示できない作品をどう扱うか、森美術館と作家の間で話し合いを重ね、「展示しない」のではなく、「エロ本はコソコソ観るから面白い」と、限定された形でも公開することを選んだ。
こうした作品から、とかくキワモノ扱いされがちな会田だが、その出自は芸大でもっとも堅い油画技法材料研究室であり、日本の古典~近代美術にも造詣が深く、小難しい言葉は使わぬまでも、識見、技術共に卓越した作家として、実は同じ作家仲間の上から下までリスペクトを集める存在でもある。
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2012.12.15(土)