事故物件を“科学的に”調査する、「(株)カチモード」という会社があります。

 代表の児玉和俊さんは、ベテラン不動産マンにして“オバケ調査員”としても知られる人物で、この秋刊行された『事故物件の、オバケ調査員 心理的瑕疵物件で起きた本当の話』(Gakken)も好評です。

 そんな児玉さんに、会社を立ち上げた経緯から、現場で体験した不可思議な出来事までを聞きました。


事故物件の調査はリフレッシュの一環!?

――まず、不動産の管理会社でキャリアを積んできた児玉さんが、「オバケ調査」を始めた経緯を聞かせてください。

 独立を決めた当初は、これまでの経験を生かして普通の不動産会社を立ち上げるつもりでした。ただ心残りだったのが、これまで出会ってきた「不思議な現象が起こる」と言われる部屋をしっかり調査できなかったことです。

 もともと稲川淳二さんの大ファンで“その手の話”は大好きでした。とはいえ当時は仕事に追われる日々。なにかあっても「あの現象は何だったんだろう」と思うだけで……。だから自分の会社をつくるなら、そうした調査ができる部署を置きたいと思っていました。

 不動産管理の仕事って、長くやっていると気が滅入ることがあるんですよ。営業的なことは部下に任せられても、トラブルの際は上役や社長が出ていくしかない。結局、火消しみたいな仕事ばかりになってしまうんです。

 だから、そうした調査部署をつくれば、仕事の合間に現場確認という名目でリフレッシュできるんじゃないかと。メインは不動産管理や売買で、調査はあくまでサブのつもりだったのですが――サラリーマン時代の最後の2年間、物件を管理する部門の責任者をやったことで考えが変わりました。

ときには「第一発見者」になることも

――不動産の管理部門って、どんな仕事をするのですか?

 管理を任されている物件のメンテナンスやリフォーム、オーナーや入居者からのクレーム対応などを一手に請け負っていました。

 管理会社の収益は扱う戸数に比例するので、常に人件費との追いかけっこ。効率化しないと回らないし、社員はギリギリの状態で働いています。でも死亡事故は、ある日突然起こる。その対応に追われてしまうと、ほかの仕事がなし崩し的に遅れていってしまう。だから僕は、あえて自分のスケジュールを7~8割程度に抑えて、「突発的なことは、すべて僕に回してくれ」としていました。

――“死亡事故”の対応というのは?

 ある部屋から異臭がするとか、郵便物がたまっている、住人と連絡が取れないといった連絡は、警察より先に管理会社にくることが多いんです。その場合、我々が安否確認を行うことになります。

――つまり「第一発見者」になる可能性もあると……。

 そうですね。入ってみたら単に寝ていただけということもありますが、稀にご遺体を発見することも。その状態もいろいろで……ショックで辞めてしまう人もいました。

 さらに警察やご遺族への連絡、保険会社とのやり取り、特殊清掃や原状回復工事の算段など、さまざまな業務があるのですが、問題はすべてが片付いたあと。オーナーさんからすれば、「徹底的にクリーニングして元通りの部屋にした後は、同じ家賃で貸したい」となるのですが、ダメなんですよね。

――事故物件だから、ですね。

 家賃据え置きでは現実問題として入居が決まらないので、オーナーさんはもちろん管理会社としても困ります。だから我々は家賃減額の提案をすることになるのですが、どのオーナーさんも「それって、いつまで?」とおっしゃいます。当然ですよね。

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