幽霊だってもともとは「誰かの大切な人」

 今回の本(「事故物件の、オバケ調査員」)にも載っていますが、以前、こんなことがありました。短期での退去が頻発している物件のオーナーさんからのご相談で、自殺があったのはその5年前。賃貸を再開したのは数年たってからで、事故物件であることを告知のうえ、割安な賃料で貸していました。でも、何人もの人が数カ月で「気味が悪い」と出ていってしまうというんです。

 その部屋で亡くなったのは1人暮らしの女性でしたが、ご両親は複雑な心境からか一度も物件を訪れていないと聞き、直感的に「ご両親の協力が必要かも知れない」と思いました。そこで管理会社を通じて連絡先を聞き、まずは電話でお父さんに事情を話したところ「娘がオバケになっているとでも言いたいのか!」と非常に気分を害されてしまいました。

――日本初の「オバケ調査」だけに、よくわかりませんもんね。

 大事な娘さんのことですし、霊感商法やオカルト系の詐欺を警戒する気持ちはわかります。僕はただ、事故物件を気味悪く思う人がいるということ、オーナーが本当に困っていることを丁寧に説明し、「調査を手伝っていただけませんか」とお願いして、なんとかその部屋に同行してもらえることになりました。

 後日、ご両親と僕とでその部屋を訪れたところ、お父さんの言葉に反応するかのように天井のLEDライトが点滅する現象が何度か起きました。お父さんが「そこにいるのか?」と言うと、フッと暗くなってパッと点く。ライトは新品に交換してすぐの状態とのことでしたし、リモコンやブレーカーの問題でもありません。

 ご両親は部屋を訪れたことで娘さんの死を受け入れられたようで、お礼を言って帰られました。その部屋は、しばらくオーナーさんが経過観察のため寝泊まりしていたのですが、1年ほどたった今でも部屋には何も起きていないそうです。「一緒に帰ろう」と呼びかけたご両親とともに出て行ったのか⋯⋯僕にはわかりませんが。

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