これこそ「安心して鳥肌が立つ」楽曲!
山口 日本のシンガーがアメリカシーンで成功できたら坂本九以来になりますね。「着うた系」と言われた時の主なユーザー層が、いわゆる「ゆとり教育」を受けた世代で、レコード会社のA&Rは「今の若い子は難しい言葉はわからないから、好きとか会いたいとかわかりやすい歌詞にしないとダメです」と言っていました(笑)。加藤ミリヤもデビュー時期は同じカテゴリーに括られていましたけれど、この曲などを聴くとソングライティングもきちんと成熟していますよね。
伊藤 歌詞の内容は、変わらず“等身大”で嘘のないリアリティを体感できる。曲を聴いて感動した時のフィジカル・レスポンスとして“鳥肌”ってあるけど、安心して鳥肌が立つ曲だと思った。
山口 「安心して鳥肌が立つ」とは、伊藤さんらしい表現ですね。プロの技術が無いとできないことですね。
伊藤 「子供じゃないの かっこつけたい」っていったり、「『うらやましい』ってもっと言って」っていったり、素直ってこういうことだよね、って思う。これを歌詞にできるって才能、ってこれを才能っていうと安っぽいんだけど(笑)。
山口 若い頃から才能は感じましたけれど、その才能がしっかり育ったということでしょうか? 伊藤さんは、この「安心して鳥肌を立たせる才能」からどんな妄想が浮かびましたか?
伊藤 もう11月だというのに、畑に放置されたままのワタシ、パンプキン。夏の間は容赦ない紫外線に、今は冷たい秋風に晒され、さらに成長過多によって皮は固くなり中身もスカスカみたい。お尻だって黒ずんでザラザラ……。
それでも、最近まではかなりチヤホヤされていた。Halloweenという人間のフェスでは主役級らしくってオブジェとしてはもちろん、通学途中の女子中学生にはキャッキャと黄色い声を浴びせられ、週末の子連れファミリーには遊具として絶大な人気、地元じゃちょっとした名所。肌はツルツルのオレンジだったし、筋肉だってパッツンと張って、そのせいか内面まで自信に満ちていたワタシ、パンプキン。
だけど、ねぇ、これからどうなるのワタシ、パンプキン。
山口 そこに行きますか? いつもに増して文学的ですね! かぼちゃのメタファーから何を感じ取ればよいですか?
伊藤 ご自由に(笑)。
加藤ミリヤ「リップスティック」
ソニー・ミュージックレコーズ 2015年11月25日発売
通常盤[CD]1,204円、初回生産限定盤[CD+DVD]1,556円(税抜)
■デビュー翌年の2005年にリリースされ、“女子高生のカリスマ”としての地位を決定付けた彼女の代表曲が「ディア ロンリーガール」。今回のシングルは、その10年後を歌った同世代のためのメッセージソングとなっている。カップリングには、「ディア ロンリーガール」のDJ SHUYA & GAKUSHIによるリミックスも収録。
■「リップスティック」作詞・作曲/Miliyah 編曲/Shinichiro Murayama
■オフィシャルサイトURL http://miliyah.com/
【動画サイト】
「リップスティック」
URL https://www.youtube.com/watch?v=qv2tOjKaVr4
2015.11.13(金)
文=山口哲一、伊藤涼