音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【次に流行る曲】
井上苑子「だいすき。」
動画配信サイト「ツイキャス」の女王
伊藤 今回は井上苑子の1stメジャーシングル「だいすき。」です。17歳の女子高生シンガーソングライター、11歳から大阪の心斎橋で路上ライブを始めて、1万枚のCDを手売りして上京したというなかなか面白いバックグラウンドをもっています。
山口 噂は聞いていました。やはり輝いていますね。
伊藤 中高生に人気の動画配信サイト・ツイキャスでは視聴者数が230万人超え。リアルタイムで視聴者のリクエストに応えて即興で弾き語りするというのが話題になって、驚異的なスピードで視聴者数を増やしたようです。
山口 「ツイキャス」(外部サイト)なんですね。スマホ世代から圧倒的な人気のライブ中継サービスです。この分野は、ソフトバンクが日本法人をやっているUSTREAMとかドワンゴのニコニコ生放送とか先行したサービスがあったのですが、ソーシャルメディアとスマートフォンに最適化したことで、ツイキャスがNo.1になりましたね。中継の時に表示される「モイ!」はフィンランド語の挨拶だそうです。
伊藤 モイ!(笑) つい最近、「nana」(外部サイト)というやはり中高生に人気の音楽投稿アプリでシンガーのオーディションをしましたが、特に女子中高生が気楽に自分の歌を投稿していて、あれはあれで面白い現象だなぁ、と思いました。あと、アイドルやアーティスト、声優&コスプレイヤーの配信が無料視聴できて、かつ誰でも配信が可能な「SHOWROOM」というアプリでもスター的な存在が出てきているようですね。ツイキャスの女王になった井上苑子は、9月公開の映画 『私たちのハァハァ』で主演にも選ばれ、いま女子高生に聞いた「これからくる!」女性アーティストで大原櫻子を抜いて堂々の1位。これからも、どんどんソーシャルメディアとスマホを使ったサイトからスター選手が出てきそうですね。
山口 同性から支持される若い女性シンガーが出てきますね。「nana」も「ツイキャス」と双璧で、10代女子からの支持が圧倒的です。先日、nanaフェスというリアルイベントもあったのですが、ユーザーの熱量の大きさに驚かされますね。
伊藤 曲はもう真っ直ぐすぎて、大人があーだこーだいう次元のものじゃない。中高生が共感できるんだから、それでいいじゃん、って感じですね。「何も手につかない 頭から消えない 会いたくって 会えなくって ドキドキが止まらない」、「ねえあたし 君がすきなんだ だいすきなの ぎゅってしてよ ちゅってしよう?」ですよ(笑)。
2015.10.30(金)
文=山口哲一、伊藤涼